米国を中心に躍進続けるケンショウ・ワタナベが満を持して挑む“歓喜の歌”

左上より:左より:ケンショウ・ワタナベ ©Abigel Kralik/吉田珠代/中島郁子
清水徹太郎/上江隼人

 年末といえばベートーヴェンの「第九」。毎年12月になると、さまざまな指揮者の演奏で聴くことができる。「第九」は暮れの風物詩であると同時に、新たな才能に出会う好機でもある。

 今年、東京フィルの「第九」特別演奏会を指揮するのはケンショウ・ワタナベ。本来であれば2021年の「第九」に出演するはずであったが、コロナ禍により来日ができず、今回ようやく出演がかなう。

 ケンショウ・ワタナベは1987年横浜生まれ。5歳より渡米し、カーティス音楽院に学び、2013年から15年にかけてヤニック・ネゼ=セガンのもとでカーティス音楽院指揮科フェローを、16年から19年にかけてフィラデルフィア管弦楽団のアシスタント・コンダクターを務めた。17年にはネゼ=セガンの代役として同楽団定期演奏会にデビューを果たした。以後も定期公演にくりかえし招かれ、ヒューストン響、デトロイト響、ロンドン・フィルやトゥールーズ・キャピトル国立管他とも共演。18年にはセイジ・オザワ松本フェスティバルでサイトウ・キネン・オーケストラを指揮して日本デビューを飾っている。

 東京フィルとは19年の定期演奏会でも共演しているが、今回は「第九」とあって一段と大きな注目を集めそうだ。歌劇《フィデリオ》序曲の後に、吉田珠代、中島郁子、清水徹太郎、上江隼人の独唱に新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)が加わる万全の声楽陣とともに、ベートーヴェンの大作に挑む。ケンショウ・ワタナベの名が多くの聴衆の記憶に刻まれることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2024年11月号より)

ケンショウ・ワタナベ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
ベートーヴェン「第九」特別演奏会
2024.12/20(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
12/21(土)19:00 サントリーホール(完売)
12/22(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp