吉田秀和、小澤征爾――偉大なふたりの先人のあとを継いで
10月16日、水戸芸術館(水戸市芸術振興財団)は、音楽評論家・片山杜秀が11月1日付で3代目館長に就任することを発表した。同ポストは、前館長・小澤征爾が今年2月に亡くなって以来空席となっており、後任の調整が進められていた。
片山は1963年、仙台生まれ。政治思想史研究者でもあり、現在慶應義塾大学法学部教授。1980年代から音楽や映画、日本近代思想史などの領域で評論活動を開始、『鬼子の歌 偏愛音楽的日本近現代史』(2019年、講談社)や『大楽必易―わたくしの伊福部昭伝―』(24年、新潮社)他多数の著作を世に送り出している。08年には『音盤考現学』および『音盤博物誌』(ともにアルテスパブリッシング)で、サントリー学芸賞に加え、水戸市芸術振興財団が主催する吉田秀和賞を受賞。12年からは同賞の審査委員を務め、さらに昨年1月には財団理事に就任するなど、同館との関係を深めていた。
水戸市制100周年を記念し、1990年に開館した水戸芸術館。その館長は、戦後日本の音楽評論のパイオニア・吉田秀和(初代)、“世界のオザワ”(2代目)と、日本のクラシック音楽界を牽引した人物が歴任してきた。水戸市長の高橋靖は、片山について「わが国を代表する評論家の一人であり、吉田館長と小澤館長の思いを引き継ぎ、水戸芸術館をお任せできる最も相応しい方です」とコメント。新館長のもとで同館が歩み出す新たな一歩に注目が集まる。
写真提供:水戸芸術館