クラシック音楽雑誌やNHK・FMの「名曲のたのしみ」で多くの人に親しまれてきた音楽評論家の吉田秀和氏が、5月22日、鎌倉の自宅で急性心不全のため死去した。享年98。東京出身。東京帝大(現東京大学)仏文科卒業。戦後の日本のクラシック音楽批評を確立したことで知られる吉田氏は、1946年に「モーツァルト」を雑誌(音楽芸術)に連載し、音楽評論の世界にデビューした。豊富な音楽的知識と洞察力を踏まえたうえでの流麗な文章表現は、大きな影響力を持って一般に受け入れられた。批評の対象は音楽のみならず美術や文学、演劇にも及ぶ。音楽教育にも貢献し、48年には桐朋学園大学音楽学部の母体である「子供のための音楽教室」の創設にかかわり、小澤征爾、中村紘子らを育てた。海外にも滞在し、フルトヴェングラーなど巨匠音楽家らの音楽に触れ、また当時日本では未知の存在だった作曲家ジョン・ケージやピアニストのグレン・グールドなどを日本の聴衆に紹介した。71年から朝日新聞の文化面で「音楽展望」の執筆を続け、75年には白水社から出版された「吉田秀和全集」が大佛次郎賞を受賞、88年からは水戸芸術館の初代館長に就任した。2006年に文化勲章を受章。「お別れ会」は7月5日(木)に水戸芸術館コンサートホールで19時より、9日(月)には東京のサントリーホールにて19時より開かれる。