これは角野隼斗の、真の意味での「ファースト・アルバム」だ。単にクラシックの楽曲を弾くだけでなく自作も加え、グランド・ピアノとアップライト・ピアノを併用し、多重録音やエレクトロニカも導入。そしてマクロコスモス(大宇宙)と人間の内なるミクロコスモス(小宇宙)との照応を音楽で描く、という壮大なテーマが立ち上がる。冷静にコントロールされたタッチに情熱を潜ませ、パーセル、バッハからショパン、ドビュッシー、ラヴェルやハンス・ジマー、坂本龍一まで自作と共に星座を描く。角野のビジョンで隅々まで満たされた本盤は、「アルバム」という名の宇宙なのだ。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2024年12月号より)
【information】
CD『HUMAN UNIVERSE/角野隼斗』
角野隼斗:HUMAN UNIVERSE/J.S.バッハ:主よ 人の望みの喜びよ/パーセル:グラウンド ハ短調/ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ショパン:ノクターン第13番/ドビュッシー:月の光/坂本龍一:solari/ハンス・ジマー:DAY ONE 他
角野隼斗(ピアノ)
ソニーミュージック
SICC-30896〜7(初回生産限定盤・2枚組・CD+Blu-ray) ¥4400(税込)
SICC-30898(通常盤) ¥3300(税込)