ドヴォルザークの「新世界より」は、交響曲の歴史において疑いなく画期的な業績であり、傑作の一つである。が、あまりにポピュラーであるが故に手垢にまみれた演奏が多いことも否めない。その点、西脇とデア・リング東京オーケストラの「新世界より」は全く違う。木管楽器を含む五重奏を複数編成する独自の配置からは、この作品の「お決まり」の響きとは異なる世界が現れる。重厚な弦楽器群や際立つ金管楽器の響きなどのオーケストラのパワーに頼ることなく、スコアに書かれた音楽を各パートが丁寧に演奏しながら固有の音響を引き出そうというコンセプトによって、新たな作品像を描き出している。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年11月号より)
【information】
CD『ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/西脇義訓&デア・リング東京オーケストラ』
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
西脇義訓(指揮)
デア・リング東京オーケストラ
N&F
NF-25811 ¥3300(税込)