【CD】ブラームス、シューマン:ヴァイオリン・ソナタ集/塩川悠子&アンドラーシュ・シフ

 かつてラーンキ、コチシュと共に「ハンガリーの三羽烏」と呼ばれたシフも、いまや伝説的な巨匠の域に入ったが、人気、実力を兼ね備えたピアニストとして精力的に活動している。夫人でもある塩川とのデュオはシューベルト、バッハ&ブゾーニ&ベートーヴェンに続くECM3作目として、ブラームスとシューマンがリリースされた。塩川のヴァイオリンはヴィルトゥオージティとは完全に距離をおいた室内楽的なスタイルで、端正で透明感のあるスタイルはロマン派のヴァイオリン・ソナタでも常に貫かれている。長年共演を重ねてきた二人だけにアンサンブルの精度や密度も高く、まさに円熟の境地であろう。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2024年11月号より)

【information】
CD『ブラームス、シューマン:ヴァイオリン・ソナタ集/塩川悠子&アンドラーシュ・シフ』

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」/シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番

塩川悠子(ヴァイオリン)
アンドラーシュ・シフ(ピアノ)

ユニバーサル ミュージック
UCCE-2107 ¥3300(税込)