温もりを感じさせる新ウィーン楽派の演奏はありそうであまりない。レオンスカヤが巨匠らしい確信をもって、ならではの解釈を披露している。ベルクのソナタはそこここに隠れているロマンの残滓を救い上げながらも過度に溺れず、知と情のバランスを巧みに取りながら進めていく。繊細なタッチで一つひとつの音に色付けを施したウェーベルン(ピアノのための変奏曲)に続き、シェーンベルクでは無調に足を踏み入れていく際の寄る辺ない狂気(3つのピアノ曲、6つのピアノ小品)が、秩序だった形式性(組曲)へと回収される様が描き出される。アルバム全体を通じて大きなドラマが見えてきた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年11月号より)
【information】
CD『ベルク、シェーンベルク、ウェーベルン:ピアノ作品集/エリザーベト・レオンスカヤ』
ベルク:ピアノ・ソナタ/ウェーベルン:ピアノのための変奏曲/シェーンベルク:3つのピアノ曲、6つのピアノ小品、組曲
エリザーベト・レオンスカヤ(ピアノ)
ワーナーミュージック・ジャパン
2173.228826 ¥オープン価格