プレコンサートや体験ワークショップも開催
日本を代表するフォルテピアノ奏者の小倉貴久子がプロデュースし、毎年夏に開催している「フォルテピアノ・アカデミーSACLA」(主催:メヌエット・デア・フリューゲル)が、今年も7月12日から15日の4日間にわたって、さいたま市のRaiBoC Hall レイボックホール(さいたま市民会館おおみや)で開催される。
このアカデミーの最大の特徴は、たくさんの歴史的鍵盤楽器が一堂に会すること。今年はなんと11台! 特に、ピアノの発明者であるクリストーフォリや、晩年のバッハも演奏したと言われるジルバーマンなどから、モーツァルトの時代に隆盛を誇ったシュタインやヴァルター、そして19世紀初頭のブロードウッドまで、鍵盤音楽史を代表するフォルテピアノ、クラヴィコードやスクエア・ピアノの復元楽器(ブロードウッドのみオリジナル)がズラリと並ぶ。
B.クリストーフォリ Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田彰 製作)
G.ジルバーマン Gottfried Silbermann(1746年 Freibergの復元楽器 久保田彰 製作2020年)
タンゲンテンフリューゲル Tangentenflügel(Ch.G.Schröter考案のアクションによる復元楽器 久保田彰 製作)
クラヴィコード Cristian Gottlob Hubert(1770年代製の復元楽器 深町研太 製作)
クラヴィコード J.H.Silbermann(1775年製の復元楽器 太田垣至 製作)
クラヴィコード Cristian Gottlob Hubert(1784年製の復元楽器 原クラヴィーア工房 製作)
J.A.シュタイン Johann Andreas Stein (ca.1788年製の復元楽器 ツッカーマン – 新井千笑 製作)
A.ヴァルター Anton Walter(1795年製の復元楽器 C.マーネ 製作)
A.ヴァルター Anton Walter(1795年製の復元楽器 太田垣至 製作)
J.ブロードウッド J.Broadwood & sons 製作のスクエア・ピアノ 1814年製 (太田垣至 修復 2012年)
初日12日のプレコンサートには、6台の楽器が登場。小倉のほか、ゲスト講師の平井千絵と西野晟一朗が出演し、D.スカルラッティからモーツァルトまで、18世紀の鍵盤音楽史を彩る作品をさまざまな音色で楽しむことができる。翌13日からの3日間は、レッスン、レクチャー、ワークショップで構成されおり、3人の講師陣が指導にあたる。すでに受講生の申込みは締め切られているが、聴講生の受付は6月5日から始まり、フォルテピアノに実際に触れることができる体験ワークショップの時間も設けられている。個体差の大きい鍵盤楽器のそれぞれ異なるタッチの感触を試すことができる貴重な機会となる。
ショパン国際ピリオド楽器コンクールの開催や川口成彦らの活躍により、近年フォルテピアノへの関心が高まりを見せており、このアカデミーにも、日頃モダンピアノを弾いているというプロやアマチュアが例年、多数参加している。モダンピアノの弾き手にとって、フォルテピアノを演奏する際に最も苦労するのが、手首を動かさないようにすること。繊細な指先のコントロールが要求されるフォルテピアノに触れることで、モダンピアノの演奏にも役立つテクニックに気づかされることも多いようだ。以前、講師を務めた川口は「ピアニストは打楽器奏者みたいなもの。実はハンマーの動きこそが大事。ちょっとした動作がハンマーの動きを加速させてしまうので、最小限の動きで、気持ちが盛り上がっても体は冷静に」とアドバイスを送っていた。
今年は、小倉によるレクチャーや、初期ピアノ製作の第一人者である久保田彰、太田垣至 両氏によるスペシャルトークも予定されており、実践と座学の両面から学べるのもこのアカデミーの魅力だ。文字通り“フォルテピアノにどっぷり浸る”4日間。同アカデミーは今年が最後の開催となる。詳細は公式ウェブサイトを参照のこと。
写真提供:メヌエット・デア・フリューゲル
◎第6回フォルテピアノ・アカデミー SACLA
会場:RaiBoC Hall レイボックホール(さいたま市民会館おおみや)
|プレコンサート|
2024.7/12(金)18:30 小ホール
|アカデミー|
2024.7/13(土)〜7/15(月・祝) リハーサルルーム、レクリエーションルーム、スタジオ1, 2, 3, 5, 6
https://fortepianoacademy.jimdofree.com