今年、ピアニストの福間洸太朗が日本デビュー20周年を迎えた。これを記念して全国10ヵ所でのリサイタル・ツアー、通算20作目となるCDのリリースが予定されている。
5月15日スタインウェイ&サンズ東京で、福間自身も出席し「メディア向け発表会」が行われた。
節目の一年にむけて福間は、「初心を忘れたくないと思っています。私がこれまで色んな国で演奏してこられたのは、本当にいい出会いに恵まれたから。その思いを大切に演奏したいです」と意気込みを語った。
リサイタル・ツアーではショパンを中心にした2つのプログラムが組まれた。
一つは「ストーリーズ」と題して。それぞれの作品の持つストーリー、プログラム全体を通して聴衆が想像する新たなストーリー、そして福間自身と作品に纏わるストーリー(思い出など)を指すという。ショパンの他、野平一郎の新作(東京公演のみ)、管弦楽曲の編曲作品からなる。前半はショパン。
「子どものころから憧れていた『英雄ポロネーズ』、2003年のニューヨークデビューリサイタル、04年の日本デビューリサイタルでも弾いた『幻想ポロネーズ』も演奏します。『葬送ソナタ』は技術的な難しさと精神性の深さから自分にはまだ早いと思い、20年近く人前で弾いていませんでした。2年前、ショパンが亡くなった年齢と同じ39歳の時に、久しぶりに演奏しましたが、さらに今回はショパンの死生観を投影した演奏にしたいです」
後半には野平一郎の新作「水と地の色彩」の日本初演の他、ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》より「序曲」 (福間洸太朗編)、「イゾルデの愛の死」(リスト編)に、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」(ボルヴィック編)とスメタナ「モルダウ」(福間編)が並ぶ。
「野平先生には、私がライフワークとしている『Shimmering Water(煌めく水)』というテーマで書いてほしいと依頼しました。『Shimmering Water』は2012年のリサイタルのテーマにもなっていて、洸太朗の『洸』の字がコンセプトです。
分かりやすい人気作品だけを並べるプログラムのアイディアもあったのですが、自分だからこそ表現できる音楽を演奏したいと思い、野平先生の作品も取り上げることにしました」
もう一つはショパンとラフマニノフがテーマ。
「ショパンとラフマニノフの共通点、または相違点を浮き彫りにしようというプログラムです。面白いことに、それぞれのソナタ第2番はどちらも変ロ短調で書かれていて、作品番号もショパンは35、ラフマニノフは36です。ラフマニノフはショパンの第2番が十八番で録音も残っています。この2曲をプログラムの中核に据えました」
アルバムは『ショパンへの想い出』と題し全曲ショパンでまとめた。あらためてこの作曲家への思いを語った。
「昔から大好きな作曲家。ショパンのおかげでピアノが好きになりました。これまでも要所要所で弾いていますが、ショパンばかりを弾くピアニストにはなりたくないと思い、あえてさけていた時期もあります。ただ、やはりこの特別な年には立ち戻りたいと思いました。
“大衆に向かって話す音楽”のリストに対して、ショパンは“大切なひとりに向かって奏でる”と言われるように、演奏する時には他の作曲家との音楽の違いに気を付けています」
珍しいピアノ作品を取り上げる演奏会シリーズ「レア・ピアノミュージック」のプロデュースや、演奏動画、解説動画を配信するYouTubeチャンネル、ぶらあぼWeb Stationの番組パーソナリティなど、演奏以外にも幅広く活動する福間。
「ヨーロッパで長いキャリアを積みたいと思っていました。その中で、サポートしてくださる人にヒントをいただきながら、自分にできることを広げてきました。YouTubeは最初は興味もなかったのですが、配信をしていく中で編集にも関心を持つようになり、だんだんと自分でも作業をするようになりました。コロナ禍でリアルの演奏機会がなくなった時、動画配信をやってみようと思えたのはそういう経緯からです」
発表会の最後には、アルバムにも収録されたショパンのバラード第1番を披露した。
【Information】
日本デビュー20周年記念
福間洸太朗 ピアノ・リサイタル《ストーリーズ》
2024.11/11(月)19:00 サントリーホール 6/8(土)発売
曲目
ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 op.53「英雄」
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.35「葬送」
ポロネーズ第7番 変イ長調 op.61「幻想ポロネーズ」
野平一郎:水と地の色彩(2024年作/日本初演)
ワーグナー:オペラ《トリスタンとイゾルデ》より「序曲」(福間洸太朗編)、「イゾルデの愛の死」(リスト編)
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(ボルヴィック編)
スメタナ:モルダウ(福間洸太朗編)
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp
他公演
9/22(日・祝) 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小)(otonowa 075-252-8255)
9/28(土) 札幌コンサートホール Kitara(小)(道新プレイガイド0570-00-3871)
10/4(金) 横浜みなとみらいホール(神奈川芸術協会045-453-5080)
10/5(土) 所沢市民文化センター ミューズ アークホール(04-2998-7777)
10/6(日) 三重県文化会館(059-233-1122)
10/9(水) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール(025-224-5521)
10/11(金) 群馬/美喜仁桐生文化会館(0277-22-9999)
10/19(土) 大阪/ザ・シンフォニーホール(06-6453-2333)
11/8(金) 愛知/電気文化会館 ザ・コンサートホール(CBCテレビ事業部052-241-8118)
※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。
日本デビュー20周年記念アルバム
CD『ショパンの想い出 Souvenir de Chopin』
ナクソス・ジャパン
NYCC-27315 ¥2970(税込)
9/13(金)発売
収録曲
ショパン:華麗なる大円舞曲 op.18
バラード第1番 op.23
ノクターン第2番 op.9-2
ポロネーズ第6番 op.53「英雄」
ピアノ・ソナタ第2番 op.35「葬送」
幻想曲 へ短調 op.49
ポロネーズ第7番 op.61「幻想」
ノクターン遺作 嬰ハ短調
※配信限定ボーナス・トラックを予定
https://naxos.jp