ヴィットリオ・グリゴーロ(テノール)


 「美声があふれ出る喉」「舞台人の華」そして「考える力」とスターに必要な三要素を備えるヴィットリオ・グリゴーロ。2015年春、待望の初来日を果たす気鋭のテノールに、リサイタルへの抱負をメールで尋ねてみた。
「日本への関心は子供の頃から僕の心の中にありました。思うに、皆さんの偉大なる文化とは、『自分を取り巻く自然の一部になる』ことなのでしょう。でも、それって実は、音楽が成し遂げることにも似ていませんか。音の波も心の壁を通り抜け、魂の底まで届き、人間と一体化しますね。リサイタルでは、ご来場の皆様が何より楽しんで下さること、そして、舞台と客席にバリアの無い人間的な交流が起きればと願っています。もしかすると、かなり詩的に語り過ぎたかもしれない。でも、それも僕の性格の一面。上手く伝われば嬉しいです!」
 いや、よく判ります!続いて、今回の選曲についてのコメントを。
「前半は19世紀の作品を。ベッリーニやロッシーニの歌曲やドニゼッティとヴェルディのオペラ・アリアなどベルカントの最も重要な4人から選びました。後半は主に20世紀の歌曲ですが、大テノールたちが愛したトスティの調べからポピュラーなメロディへ、そしてナポリのカンツォーネへの敬意も捧げます。ヴェルディの《海賊》のアリアは演奏会であまり歌われないメロディかもしれませんが、素晴らしく書かれていると思うので世界中で披露しています。皆さまがシンプルに楽しんで下さればと思います。『歌声の色彩』は人生経験によって深まりますね。僕の歌が一つの音・休符・高音の単なる連続ではなく、芸術的な厚みを伴うものとして皆様に届けば幸いです」
 そう。彼の芸歴は想像以上に長いもの。13歳で《トスカ》の牧童役で舞台デビューを果たしている。なんでも、オペラ好きの父親の影響が大きかったとか?
「本当に、あらゆるオペラを聴かされて育ちました。また、複数の言語をマスターするよう勧められ、ごく幼い頃から勉強してきたフランス語も、今では役柄を広げる一助となっています。ご存じかもしれませんが、僕のデビューはパヴァロッティさんとの共演でもありました。彼にはそれ以来、亡くなられるまでずっと僕のことを気にかけていただき、多くを教えて下さったことには本当に感謝しています。マエストロも愛した日本の皆様の前で歌えるのが、今から待ち遠しいです!」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

2015.4/5(日)14:00、4/10(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:テイト・チケットセンター03-3402-9911 
http://www.tate.jp

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