青山音楽記念館 バロックザール(京都府京都市)を運営する公益財団法人青山音楽財団は、1月26日、「第33回青山音楽賞」の受賞者を発表した。23年1月から12月の間にバロックザールで開催された演奏会が選考の対象となり、演奏技術のみならず演奏会そのものを総合的に評価する審査方式が採られている。
第33回青山音楽賞受賞者
新人賞
太田糸音(おおたしおん/ピアノ)、戸澤采紀(とざわさき/ヴァイオリン)
青山賞
該当者なし
バロックザール賞
ディルク・アルトマン(Dirk Altmann/クラリネット)&岡本麻子(おかもとまこ/ピアノ)、TRIO VENTUS(トリオ・ヴェントゥス/ピアノ三重奏団)
受賞者には賞金の他、新人賞は留学や国際コンクールへの参加のための研修費、バロックザール賞は受賞記念演奏会開催のための助成費用が贈られる。
太田糸音は2000年生まれ、大阪府出身。東京音楽大学、名古屋芸術大学大学院を経てベルリン芸術大学で研鑽を積む。第8回仙台国際音楽コンクール第3位をはじめ、シドニー国際ピアノコンクール、コインブラ・ワールド・ピアノ・ミーティングなどのコンクールで優勝・入賞。ソリストとしてベルリン・ドイツ響をはじめとしたオーケストラと、室内楽ではベルリン・フィルのメンバーとも共演している。
戸澤采紀は東京藝術大学を経てリューベック音楽大学に在学。第85回日本音楽コンクールで最年少優勝、ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール第2位(最高位)などの実績を持つ。ローザンヌ室内管、リューベックフィル、N響、読響など、国内外のオーケストラと共演しており、2022年1月には『戸澤采紀 IN CONCERT』でCDデビューも果たしている。
ディルク・アルトマンは、1985年からSWR交響楽団(ドイツ)の首席クラリネット奏者を務めている。カラヤンやチェリビダッケ、クライバーなど歴史的な名指揮者とも共演経験があり、白井圭(ヴァイオリン)、横坂源(チェロ)、幣隆太朗(コントラバス)ら日本の気鋭とSWR響の楽団員で結成された「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト」のメンバーとして日本国内でも度々演奏している。
岡本麻子は桐朋女子高等学校、フライブルク州立音楽大学、同大学院を経てケルン音楽大学演奏家資格を最優秀で修了。ロン・ティボーなど多くの国際コンクールで入賞しており、パリのメシアン国際ピアノコンクールでは第3位になり、ガラコンサートでピエール・ブーレーズ指揮のアンサンブル・アンテルコンタンポランと共演し注目を浴びた。仙台フィル、日本フィル、大阪フィル、読響、フランス国立放送管などのオーケストラと共演。
TRIO VENTUSは、廣瀬心香(ヴァイオリン)、鈴木皓矢(チェロ)、石川武蔵(ピアノ)という三名の若手奏者からなる。2020年東京文化会館にてデビューリサイタルを行い、その後もサントリーホール、Hakuju Hall、大阪のザ・フェニックスホール等、全国の著名なコンサートホールで演奏。レパートリーは多岐にわたり、 21世紀に作曲された作品にも積極的に取り組む。「Schubert & Shostakovich」をはじめとした録音もリリースしている。
授賞式は、3月2日に同ホールで行われ、後日、式典および披露演奏会の様子が特設ページにて配信される。
[各部門の評価]
新人賞(演奏会当日26歳未満の個人の演奏会が対象)
受賞公演:「太田糸音 ピアノリサイタル」23.12/10(日)
評価:バッハへの憧憬と敬意が詰まったリサイタル。寸分の隙もない技術と表現力で観客を圧倒し、作品の魅力を余すことなく伝えた。
受賞公演:「戸澤采紀 ヴァイオリンリサイタル」 23.12/21(木)
評価:真摯に作品と対峙し確固たる自身の音楽世界を創出する。鋭い感性と構築力、艶やかな音色による圧巻の演奏で観客を魅了した。
バロックザール賞(アンサンブルの演奏会が対象)
受賞公演:「TRAUMGEKRÖNT ~夢を戴きて~ ピアノとクラリネットによるドイツ浪漫名曲の旅」 23.3/18(土)
評価:いつまでも聴いていたいと思うような音楽の悦びに満ちたクラリネットと、それを引き立てる様にドラマを牽引する華麗なピアノで、豊かな表現の世界を繰り広げた。
受賞公演:「TRIO VENTUS RECITAL 見知らぬ情景」23.12/16(土)
評価:凛とした風格のある演奏で、三人の音の美しさが絶妙に溶け合っていく。互いに触発し合う躍動感に満ちた音楽は新しい息吹を感じさせた。
青山音楽賞
https://aoyama-music-foundation.or.jp/music_awards_winner/