イリア・グリンゴルツ(ヴァイオリン) ―無伴奏

鬼才の妙技に魅せられる一夜

©Kaupo Kikkas

 グリンゴルツが、パガニーニのカプリース全曲を弾いた演奏会を聴いたことがある。スマートでスタイリッシュな運びなのかと思えば、超絶技巧を重ねていくにつれ、その移ろいゆく表情に引きこまれていく。語り口がじつにうまいヴァイオリニストだといたく感心したものだ。合間に挟みこまれたシャリーノ作品が、その特殊奏法がまったく特殊だと感じさせないくらいに説得力をもっていたのも。

 2月にトッパンホールで行われる無伴奏リサイタルには、そんなパガニーニの血筋を受け継ぐ作品を取り上げる。イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの第1番と第5番を軸に、19世紀から21世紀にかけての技巧的な音楽が並ぶ。

 イタリアの作曲家シャリーノの作品は要注目だ。代表作である「6つのカプリース」、その続編でグリンゴルツのために書かれた「6つの新しいカプリース」(日本初演)が演奏される。空気の振動や水しぶきを感じさせる音の連続。見えないものの気配、そこから生まれる幻想をグリンゴルツは掻き立ててくれるだろう。

 クラリネット奏者としてもお馴染み、ヴィトマンのエチュード第3番は、究極の無窮動的作品。まるで耳で聴くスクリューボール・コメディだ。そして、19世紀に書かれた作品とは思えないほどに挑戦的なエルンストの練習曲からは3曲を演奏する。プログラムを締めくくる第6番は、「庭の千草」の主題による変奏曲。繊細なテクニックによる大胆な音楽を堪能できることだろう(アンコールにはこの作曲家が編曲したシューベルトの「魔王」を期待!)。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2024年1月号より)

2024.2/13(火)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com


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