上野耕平(サクソフォン)

サクソフォンの音色の魅力満載です!

 デビュー・アルバムのタイトルが『アドルフに告ぐ』。ひねったタイトルだが、手塚治虫のマンガとは関係ない。ここでのアドルフとは、サクソフォンの生みの親アドルフ・サックス(1814〜1894)のこと。2014年はその生誕200年となる。そしてそのアルバムで演奏しているのが、若手サクソフォン奏者として数々のコンクールを制した上野耕平である。このデビュー・アルバムは、編曲ものではなく、サクソフォンのために書かれた作品ばかりを集めている。
「サクソフォンの楽器としての魅力を知っていただくには、やはりその楽器のために書かれた作品で勝負するのが一番良いだろうと思いました」と上野。吉松隆「ファジーバードソナタ」に始まり、A.リード「バラード」、P.モーリス「プロヴァンスの風景」、P.クレストン「サクソフォン・ソナタ」、J.ドゥメルスマン「ファンタジー」というラインナップだ。
「一般の方には馴染みがないかもしれませんが、サクソフォンを習っている方にはよく知られた作品ばかりです。そして聴いていただければ分かるように、サクソフォンの音色の魅力がこれらの作品の中に満載されていると思います」
 小学校の時に吹奏楽に出会い、サクソフォンを始めた。そして小学校4年生の時に、日本のクラシカル・サクソフォンの世界をリードしてきた須川展也の演奏に触れた。
「それは人生を変える体験でした。こんな演奏をする人がこの世界にいるんだ、という驚き。そして自分もそこに近づきたいという想いが強くなりました」
 以後、吹奏楽を続けながら、須川に弟子入り。現在は東京芸術大学の4年生に在籍中だ。2011年に日本管打楽器コンクールのサクソフォン部門で最年少優勝(特別大賞もあわせて受賞)した。あえて聞いた、サクソフォンのどこに魅力を感じるか、と。
「それはすべてです。楽器の音色、サクソフォンのために書かれた作品の魅力、そして機械的な部分も。例えばこのキーを押すと、こんなところが動く(と実演してくれた)とか、機構としても面白いものを持っています。そして、まだまだ楽器としての可能性が開拓され尽くしていないところも」
 小学生の頃の最初の夢は、鉄道の運転手になることだった。鉄道に乗るのも好き(特に飯田線が良いらしい)で、サクソフォンは機械好き男子にはぴったりの楽器だったようだ。まずは、12月28日には神奈川県民ホールでの『ファンタスティック・ガラコンサート2014』に出演して、ドビュッシーの作品などを演奏する。来年1月にはデビュー・リサイタルも開催。新星の出現を目撃したい方は、このチャンスを逃さないように。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

ファンタスティック・ガラコンサート2014
12/28(日)15:00 神奈川県民ホール
問:チケットかながわ0570-015-415 
http://www.kanagawa-kenminhall.com

CDリリース記念コンサート
2015.1/12(月・祝)14:00 ヤマハホール
問:日本コロムビア03-6895-9001

CD『アドルフに告ぐ』
日本コロムビア
COCQ-85070 ¥2500+税