愛知室内オーケストラ 特別演奏会2023

ドイツ・ピアノ界の巨匠との共演4年目にふさわしい骨太なプログラム

左:愛知室内オーケストラ
右:ゲルハルト・オピッツ ©HT/PCM

 名古屋に本拠を置く愛知室内オーケストラ(ACO)は2021年以降、毎年12月にドイツのピアノの巨匠ゲルハルト・オピッツとの共演を東京都内で重ねてきた。

 オピッツとACOの出会いは2020年12月。前常任指揮者の新田ユリの指揮により、名古屋でベートーヴェンのピアノ協奏曲第1〜5番を1日で演奏した。その1年後には、ベートーヴェン自身によるヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版を加えた全6曲を、ユベール・スダーン指揮で2日間にわたり紀尾井ホールで披露。22年は王子ホールでACOメンバーと室内楽に臨み、シューマンのピアノ五重奏曲ほかを演奏している。

 そして共演4年目の今年は紀尾井ホールへ戻り、山下一史の指揮でシューマンのピアノ協奏曲を演奏する。作曲家を微妙にスライドさせながら管弦楽との協奏曲、メンバーとの室内楽の両面からオピッツの薫陶を受け、ACO全体の音楽性に刺激を与えていく長期戦略が明らかに存在する。

 山下は2021年に実現した初共演(武満徹とR.シュトラウス、ブラームス)や続くストラヴィンスキー没後50年特集の成功を受け、22年4月にACO初の音楽監督ポストに就いた。ベルリン・フィルでカラヤンが亡くなるまでアシスタントを務めて以来、ドイツ=オーストリアの古典派からロマン派にかけてのレパートリーを主軸に指揮活動を繰り広げてきた。ACOでは室内オーケストラの特性も見据え、自身のマッチョな音楽性と室内楽的アンサンブルの融合から表出力の高い演奏を導き出している。音楽の「言語基盤」を共有するオピッツとのシューマンも、聴きごたえ十分のはずだ。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2023年12月号より)

2023.12/22(金)19:00 紀尾井ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831 
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