外村理紗(ヴァイオリン)

孤独な舞台で示す22歳の現在地

(c)Jiyang Chen

 若きヴァイオリニストが、イザイの無伴奏ソナタ全6曲を一晩で奏でる。各曲は演奏機会が多いものの、全曲リサイタルとなればいまだ稀少かつ困難な挑戦となる。今冬そこに挑むのが、外村理紗。2017年日本音楽コンクール第2位、翌年17歳でインディアナポリス国際コンクール第2位という快挙で注目を集め、現在はニューヨークを拠点に、マンハッタン音楽学校で学びながら同地のマネジメント会社とも契約。アメリカを中心に活躍中の俊才だ。

 「大きな国際コンクールはインディアナポリスが初めてで、事前審査が通っただけでも嬉しかったのに、ファイナルに行けて入賞までできて、本当に驚きました。その後もアメリカが活動の中心になっていますが、幼い頃インターナショナルスクールにいたり、アメリカで学んだ先生につくことが多かったりなどで、精神的に近く感じています」

 無伴奏のみのリサイタルは「経験がなく、楽しみですし、怖くもあります」という外村だが、本公演にはあえて「22歳、イザイに挑む」と題して覚悟を示す。

 「自分の考えや状態がすべて明らかになる孤独なステージは、節目で大きな挑戦をしたいときにふさわしいと考えています。もちろんバッハは特別ですが、いま最も共感できるのがイザイで、ここで取り組みたいと思いました。イザイは作曲家としてすばらしいばかりか、奏者としての彼がいなければフランクやショーソンの名作も生まれなかったかもしれず、ヴァイオリン界の神様みたいな存在だと思います」

 イザイの無伴奏を初めて聴いたのは小学生のとき、オスカー・シュムスキーの弾く全曲CD(超名盤!)で、大きな衝撃を受けて夢中になったという。そこから少しずつ勉強を続けてきた大切なレパートリーで、各曲への思い入れも深い。

 「シゲティに捧げられた1番は、バッハのソナタの影響が強く、構成も長さも特別で、体力配分が大変な大作です。2番はバッハの音楽で始まり、グレゴリオ聖歌『怒りの日』の旋律が重なります。『怒りの日』が頭の中で鳴り続けるという苦悩の表現が印象的です。3番は捧げられたエネスコの雰囲気満点で、不穏に始まり、途中ダンスを経て、最後のクライマックスに至る構成がすばらしい。アメリカのデビューリサイタルでも3番を弾いて盛り上がりました。4番も捧げられたクライスラーの作品が透けて見えてくるようで、聴きやすい曲だと思います。

 5番はいま最も好きな曲です。1楽章の夜明けの描写が実に美しく、最初の静寂から壮大なクライマックスもたまりません。2楽章の5拍子の踊りも、バレエというより農地を耕すような感じですごく楽しいです。6番は最初に勉強した曲で、“闇”がよくわかっていない幼い頃、ホ長調で明るい6番がいいのではと。底抜けに明るくて大好きですが、技術的には大変です(笑)」

 イザイについて語ると笑いが絶えず、弾けるのが本当に嬉しいという外村。「私にとっては転機になる大きな挑戦で、いま感じていることをしっかり勉強して表現できたらいいなと思います」と謙虚に語る彼女のソロ・ステージ、楽しみでならない。
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年11月号より)

※本公演は出演者の体調不良のため中止となりました。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(1/19主催者発表)

https://www.kajimotomusic.com

外村理紗 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル ~22歳、イザイに挑む~
2024.2/2(金)19:00 紀尾井ホール
問:カジモト・イープラス050-3185-6728 
https://www.kajimotomusic.com