クラシック・キャラバン2023 クラシック音楽が世界をつなぐ ~輝く未来に向けて~

地元出身アーティストが多数出演! 11月公演の聴きどころ

 「クラシック・キャラバン」が楽しい。音楽事務所やコンサートホールなどで構成される「日本クラシック音楽事業協会」が2021年に立ち上げたプロジェクト。コロナ禍で疲弊したクラシック音楽界を、業界の総力を挙げてワンチームで復興しようという全国規模のコンサート企画だ。今年はすでに8月にスタート、来年1月まで、それぞれに趣向を凝らした内容のガラ・コンサートが全27公演開催される。日本の文化行政はしばしば批判にさらされるが、「キャラバン」には文化庁が積極的に取り組んでおり、毎年予算をつけて後押ししていることは率直に評価できるだろう。

 「キャラバン」は会場の規模と編成によって2タイプ。大ホールでは特別編成の「スーパー・クラシック・オーケストラ」が出演する「華麗なるガラ・コンサート」、小ホールでは室内楽を中心とした「煌めくガラ・コンサート」が行われる。11月の公演をピックアップしてご紹介しよう。

上段左から:原田慶太楼 ©MASATOSHI YAMASHIRO/豊嶋泰嗣 ©中倉壮志朗/清水和音 ©Mana Miki
下段左から:川久保賜紀 ©Yuji Hori/遠藤真理 ©Yusuke Matsuyama/嘉目真木子 ©T.Tairadate

 大ホールでの「華麗なる」は札幌公演(11/23)。「熱狂三協奏曲」と銘打った公演タイトルどおり、協奏曲三昧の熱い午後になりそう。豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)が北海道出身の伊福部昭の「協奏風狂詩曲」を、清水和音(ピアノ)がラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を、川久保賜紀(ヴァイオリン)と遠藤真理(チェロ)がブラームスの二重協奏曲を弾く。各公演に必ず1曲は日本人作品を入れるというのは今年の「キャラバン」の試みで、このプロジェクトで作曲家たちにも貢献したいという意図がある。この日の指揮は邦人作品にも意欲的な原田慶太楼だけに、いっそう注目される。

 小ホール公演の「煌めく」からは、まず鹿児島公演「女神たちの音楽」(11/9)。福岡出身の南紫音(ヴァイオリン)、長谷川陽子(チェロ)、田部京子(ピアノ)、大分出身の嘉目真木子(ソプラノ)、そして女性弦楽アンサンブル「ミューティア」が登場して華やぐ。「愛の挨拶」や「四季」などが並ぶ楽しみな名曲プログラムだが、企画アドバイザーも務める司会の作曲家・池辺晋一郎は、7月に開かれた記者会見でこう言っていた。「名曲コンサートをやるとよく、わかりやすくて良かったなどとほめられる。でも、そんなことは考えたことがない。音楽は本来わかりやすいもの。いい音楽とそれほどよくない音楽はあるかもしれないけれど(笑)」。なるほど! でも今回の顔ぶれなら必ずいい音楽が聴けるであろうことは、誰にでもわかりやすい。

上段左より:松田華音 ©Ayako Yamamoto/柴田俊幸/佐藤采香 ©Ayane Shindo
下段左より:山下牧子/岡 昭宏/鵜木絵里 ©深谷義宣aura.Y2

 地元出身者にこだわった観があるのが高松の「〜歌の翼に〜 歌でつながる世界の旅」(11/23)。9人の出演者のうち、松田華音(ピアノ)、柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ)、佐藤采香(ユーフォニアム)、山下牧子(メゾソプラノ)、岡昭宏(バリトン)の5人が高松市出身。そこに“県外”からエミィ・トドロキ・シュワルツ(ピアノ)、湯浅江美子(ヴィオラ)、千田悦子(ハープ)、鵜木絵里(ソプラノ)も合流。美しい瀬戸内海を臨む絶好のロケーションのホールで、歌手たちはもちろん、器楽の名手たちもたっぷり歌う(公式サイトに掲載の動画では、器楽奏者が−声を出して−歌うかも、という匂わせコメントも!)。

 入場料が比較的リーズナブルに抑えられているのはうれしい。友人や家族を誘いやすいし、コロナでコンサートから少し遠のいているという人にとっては、“リハビリ”を始めるにもうってつけだ!
文:宮本 明
(ぶらあぼ2023年11月号より)

《華麗なるガラ・コンサート》
2023.11/23(木・祝)15:00 札幌コンサートホール Kitara
問:オフィス・ワン011-612-8696
《煌めくガラ・コンサート》
2023.11/9(木)18:30 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第2ホール
問:鹿児島音協099-226-3465
11/23(木・祝)16:00 香川/穴吹学園ホール
問:テレビマンユニオン音楽事業部03-6418-8617
https://www.classic-caravan.com
※詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。