外山雄三(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

巨匠の自作自演とバッハを巡る名曲

 12月の日本フィル東京定期で指揮台に立つのは日本の音楽界の重鎮、外山雄三。東京定期は17年ぶりの登場となる。『音楽の父 J.S.バッハを巡って』の副題を掲げ、自作とベートーヴェン、バッハの編曲作品からなる興味深いプログラムが組まれた。
 自作自演となるのは、日本フィルゆかりの作品でもある交響詩「まつら」。1982年の日本フィル九州ツアーの際に、唐津市の人々を中心とする募金によって委嘱されたという、地元市民の要望から生まれた交響詩である。当地に伝わる古謡を素材として、精彩に富んだ管弦楽曲が生み出された。
 小山実稚恵を独奏に迎えるベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」も大きな聴きものとなる。常に期待を裏切らない日本屈指の名手と大ベテランとの共演となれば、風格の漂うベートーヴェンを期待したいもの。
 オーケストラ向けの華麗な編曲が施されたバッハの3曲も楽しみだ。ストコフスキー編曲の代表作ともいうべき「トッカータとフーガ」、カンタータ第208番よりアリア「羊は安らかに草を食み」。そしてもう一曲はレスピーギの編曲による「パッサカリアとフーガ」。この曲はストコフスキーによる編曲が知られているが、今回はレスピーギの編曲で演奏される。一段とゴージャスな装いをまとったバッハを堪能することができるだろう。色彩豊かで絢爛たるオーケストレーションがバッハに新たな生命を吹き込む。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年12月号から)

外山雄三 ©S.Yamamoto
外山雄三 ©S.Yamamoto

第666回 東京定期演奏会
12/5(金)19:00、12/6(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
http://www.japanphil.or.jp