群響はいま、昇り調子で高いポテンシャルをもっています
日本の音楽シーンの牽引者の一人、大友直人は、この11月、昨年度から音楽監督を務める群馬交響楽団の東京オペラシティ公演を指揮する。
「群響は、来年創立70周年を迎える日本でも有数の歴史を誇るオーケストラです。伝統的に学校公演の比重が高く、群馬ではオーケストラ=群響といわれるほど根付いています。メンバーは非常に真面目で、優秀な奏者が大勢いますし、若い人も徐々に増加中。現時点での水準も高いのですが、将来へのポテンシャルは相当高いと思います」
ただ本拠地の群馬音楽センターは、1961年の竣工と相まって残響が少ない。そのため「残響の多いホールで演奏すると、想像以上にいいオーケストラだと感じる」という。東京公演はそれを知る絶好の機会だ。
「東京や近隣の方々にも群響を、より深く広く認識していただくのが、東京公演の一番の意義。素晴らしいホールで現在の群響の響きを確認したいとの思いもあります。また個人的には、地方のオケが恒常的に大都市で公演し、評価されることで、東京集中の音楽文化が逆に地方へフィードバックされていくと考えています」
今回は、東京公演でしか聴けない意欲的なプログラム。軸はエルガーの交響曲第1番だ。
「とてもロマンティックな音楽。ご存じ『威風堂々』を思わせる肉厚で豊穣な響きが全編を流れると同時に、繊細でリリカルな魅力もある作品です。またエルガーは敬虔なクリスチャンで、宗教曲や合唱曲を沢山書いており、そうした作品に現れるモティーフやサウンドが、この交響曲にも散見されます。私自身、宗教曲を含めた彼の作品をかなり演奏してきましたので、自分なりのエルガー像ができつつあります。今回は、作品の輪郭を明確に表現し、曲の魅力をストレートに伝えるよう心がけたいと思っています」
前半は、同じく英国のディーリアスの「楽園への道」と、名手・竹澤恭子がソロを弾くブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。
「『楽園への道』は美しく味わいのある素敵な小品。ブルッフは、私が最も好きなヴァイオリン協奏曲で、まさに珠玉の名曲です。竹澤さんは骨太で力強いしっかりした演奏をされる方。久しぶりの共演なので楽しみにしています」
2018年には高崎駅前に新ホールが建ち、群響のフランチャイズホールとなる予定。大友もプランニングに関わっている。
「今後は、楽団の運営システムの改革や活動内容の充実を図ると同時に、高崎や群馬県内におけるエンターテインメントの形成にも積極的に参加していきたい。群響も新ホールができる4年後にフォーカスを絞って再構築しようという空気に溢れています。変貌する群響を、東京の皆様も長いスパンで聴いて頂けたら嬉しいですね」
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
群馬交響楽団 東京オペラシティ公演
11/27(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:カジモト・イープラス0570-06-9960
http://gunkyo.com