巨匠への道を進む新しい出発点
1980年代中盤、キーシンと共にロシアの新世代を代表する演奏家として来日し、絶大な人気を誇ったワディム・レーピン。その後も世界各地でのコンサートやCD録音、レパートリーの拡大などを積み重ね、40代となった今では風格と深い音楽性を携えたアーティストになった。まさに“レーピンNOW!”と言える秋の来日公演だが、すみだトリフォニーホールにおける2デイズは、その真価をがっちりと受け止めるプログラムだと言えるだろう。
1日目はチャイコフスキーの大作三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」を軸に、ラフマニノフのピアノ三重奏曲第1番、ラヴェルの「ツィガーヌ」などが演奏される。共演は濃厚な音楽を奏でるアレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)と、雄大な演奏に定評があるアンドレイ・コロベイニコフ(ピアノ)の2人。ロシア音楽の深みとフランス音楽の粋が交錯し、室内楽奏者レーピンの真価を目の当たりにするはずだ。
2日目は協奏曲プログラム。レーピンの核心へと切り込むショスタコーヴィチの協奏曲第1番、そしてクニャーゼフとの共演で壮絶かつ深遠な演奏が期待できるブラームスの二重協奏曲だ。2曲で演奏時間は70分ほどだが、凝縮された音楽に圧倒されてしまうだろう。オペラを中心にキャリアを築いてきたロベルト・トレヴィーノ指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団が、レーピンの芸術をサポートする。
もう神童伝説に追われる時期は去った。この2日間が、巨匠への道を進む新しい出発点なのだ。心してその音楽を受け止めたい。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年9月号から)
レーピン with クニャーゼフ&コロベイニコフ 11/27(木)19:00
レーピン&新日本フィル 11/28(金)19:00
すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
http://www.triphony.com