セバスティアン・ヴァイグレ(指揮) 読売日本交響楽団

世紀を超えたはるかなる音楽の旅路

 読売日本交響楽団の7月定期演奏会は、常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレの指揮で18世紀から21世紀に至る壮大な音楽の旅。最大の注目は、樫本大進を招いての細川俊夫作曲・ヴァイオリン協奏曲「祈る人」の日本初演である。本作は、今年3月2日に、樫本の独奏、パーヴォ・ヤルヴィ&ベルリン・フィルによってベルリンで世界初演されたばかり。この作品では、細川のほかの協奏曲と同じように、ソリストはシャーマンであり、オーケストラはシャーマンの内と外に拡がる宇宙、自然であるという。そして、ヴァイオリンが祈りの歌をうたい、苦難を経て最後は浄化へと至る。

 また、この日のプログラムの最後に、ナチス政権に退廃音楽のレッテルを貼られたシュレーカーの作品から、「あるドラマへの前奏曲」が演奏されるのも聴きものだ。この20分弱の管弦楽曲は、シュレーカーの代表作であるオペラ《烙印を押された人々》の前奏曲を拡大したもので、その素っ気ないタイトルとは裏腹にロマンティックで豊潤な音楽である。フランクフルト歌劇場でシュレーカーの《はるかなる響き》を指揮するなど、彼の作品を熱心に取り上げてきたヴァイグレが、シュレーカーの真価を伝えてくれるだろう。

 そのほか、モーツァルトの「フリーメイソンのための葬送音楽」と交響曲第31番「パリ」も取り上げられる。読響がそれぞれの作品の時代に合った演奏スタイルを披露することであろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年7月号より)

第630回 定期演奏会 
20234.7/27(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp