絶好調コンビがおくるノーブル&パストラル
10年目に入ったジョナサン・ノットと東京交響楽団のコンビから目を離せない。特にこの5月は、終始ハイテンションで凄絶を極めたR.シュトラウスの《エレクトラ》、変幻自在の運びで既成概念を覆したマーラーの交響曲第6番「悲劇的」と快演を連発。マッシブとセンシティブが同居した生命感溢れる演奏は、必聴度を増す一方だ。
続く7月の定期は、エルガーのヴァイオリン協奏曲とブラームスの交響曲第2番。今度は柔らかみのあるプログラムが用意された。エルガーの協奏曲は、同作曲家ならではの気品と重層感を兼備した50分近い大曲。芳醇なメロディと超絶技巧を堪能できる作品で、メニューインやハイフェッツが愛奏したことでも知られている。ここではまずイギリス人ノットの、同国人のみ可能と思しきエルガーへの深いアプローチに期待。そして独奏は神尾真由子。強靭なテクニックとパッショネイトな表現力に味わいを加えて、日本屈指の存在となった彼女がいかなるソロを聴かせてくれるのか? 生演奏が稀な曲だけにぜひ確認したい。
後半のブラームスは、ノットがご当地ドイツのバンベルク響のシェフ時代に交響曲チクルスを行って日本公演でも高評価を獲得し、東響とのヨーロッパ・ツアーで第1番を披露して賞賛された得意の作曲家。昨年5月、東響での第3番の清新かつドラマティックな名演も記憶に新しい。今回の第2番は、メロディアスで牧歌的な音楽─意外にまとめるのが難しい─の表現が要注目。終楽章の推進力にも熱視線が注がれる。いずれにせよ実体験する価値は大。そこには新鮮な感動が待っている。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年7月号より)
川崎定期演奏会 第92回
2023.7/15(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
第712回 定期演奏会
7/16(日)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
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