桐朋学園大学卒業生によって2017年に結成された彩三重奏(イロドリオ)のファーストアルバム。日本在住の作曲家シートンが3人の演奏を聴いて直接オファーしたことから実現した録音で、聴きやすい曲調にノスタルジーを感じさせる彼の30分強の大作は聴きごたえ充分。ヴァイオリンに長いカデンツァがあるのはユニーク。カップリングはショスタコーヴィチの名作で、3人は真摯に臨み、毒や闇の表現にはこだわりすぎず、澄んだ音色で端正に構築していく。それでも第4楽章中間、「ユダヤの主題」で高揚していく場面は熱い興奮を隠せず、素直な感情の表出とライブ感に好感。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年7月号より)
【information】
SACD『トリオ・コンチェルタンテ/彩三重奏』
P.シートン:トリオ・コンチェルタンテ/ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調
彩三重奏(イロドリオ)
【中津留果己(ヴァイオリン) 石井沙和子(チェロ) 香川明美(ピアノ)】
オクタヴィア・レコード
OVCL-00809 ¥3850(税込)