小山実稚恵の室内楽・新章 第1回 小山実稚恵(ピアノ) & 矢部達哉(ヴァイオリン) & 宮田大(チェロ)

共演重ねる名手たちが集い、新シリーズが開幕

 室内楽でも圧巻の名手ぶりを発揮する小山実稚恵。第一生命ホールで5年計画の新たなシリーズ「小山実稚恵の室内楽・新章」をスタートする。同ホールでの「小山実稚恵の室内楽 〜ブラームス、熱く深い想いをつなげて」(2018年〜、全6回)の続編的位置付け。前シリーズにも登場した矢部達哉(ヴァイオリン)、宮田大(チェロ)とのトリオが毎回の中心となり、そこにさまざまなメンバーが加わって、二重奏から五重奏まで、変化に富んだプログラムを繰り広げてゆく。

 ピアノ・トリオの面白さとして、往年の百万ドルトリオに代表される、ソリスト3人のガチバトル的なスリリングな魅力がよく挙げられるが、小山、矢部、宮田の3人はそこに収まらない。もちろん、際立った個性を持つソリストたちである一方で、すでに何度も共演を重ねている彼ら。並行して杉並公会堂でも長期シリーズを始動するなど、もはや準常設トリオ。互いを丁寧に、そして鋭利に感じ合う、室内楽の極みを聴かせる。

 第1回公演はドヴォルザークのピアノ三重奏曲「ドゥムキー」をメインに、ハイドンの「ジプシー・トリオ」と、矢部・宮田によるコダーイの二重奏曲op.7という、民族の土俗的パワーを共有するプログラム。ピアニストのプロデュース公演でピアノを含まない編成を演奏することにも、プログラミングへのこだわりが見えるだろう。“聴衆ファースト”とも言える。ここから始まる新展開。ワクワクしかない。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2023年6月号より)

2023.12/2(土)14:00 第一生命ホール 
5/23(火)発売
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
https://www.triton-arts.net