ジョナサン・ノット&東響 渾身の《エレクトラ》リハーサルが進行中!

前回、大絶賛のコンサートオペラ第2弾、見逃せない公演が迫る!

取材・文:林 昌英

(c)TSO

 ジョナサン・ノットと東京交響楽団によるリヒャルト・シュトラウス コンサートオペラ、超名演だった昨秋《サロメ》に続き、ついに《エレクトラ》が実現する。そのリハーサルの初日と2日目を取材した。

 待望の超大編成。ヴァイオリン3パート24人、ヴィオラ3パート18人、チェロ2パート12人、コントラバス8人。管楽器も4管編成で、クラリネットセクションはなんと8人!しかも、今回はコンサートマスターに小林壱成、第2ヴァイオリンのトップにグレブ・ニキティンとコンマスそろい踏み、ヴィオラは3パートに首席3人がそれぞれ座るなど、この曲でしかあり得ないであろう厚い布陣にも期待が高まる。

ステージいっぱいの大編成(c)TSO

 初日はオーケストラだけのリハーサル。《エレクトラ》は細かく分かれた各パートが前代未聞の難しさで、それらが複雑に絡み合う。1秒たりとも気を抜けない曲だけに、初日は落ち着いて曲に馴染みながら、要所を押さえていく。初日から超難曲がほとんど問題なく形になっていたことは特筆したい。楽員個々人の準備が行き届いていて、それが近年の東響の好調さの理由だろうし、マエストロが全幅の信頼を置いているのもよくわかる。

左より:クリスティーン・ガーキー、シネイド・キャンベル=ウォレス(c)TSO

 2日目はキャストが勢ぞろい。主要欧米歌劇場クラスの外国人歌手陣のすばらしさはもちろんだが、日本人歌手陣の力強さにも驚かされる。特に「5人の侍女」は全員主役級で公演が成立するおなじみの顔ぶれで、侍女たちのシーンが圧巻の聴きものになる。そしてタイトルロールのクリスティーン・ガーキー。世界屈指の当たり役だけに余裕があり、第一声の“allein!”から深々とした声が響き渡る。役の理解もパワーも十二分なガーキーが、本番でどれほどのパフォーマンスを実現するのか、期待が高まる。大ベテランのハンナ・シュヴァルツの出演も胸が熱くなる思いで、歌唱の健在ぶりも際立ち、舞台を引き締める。キャスト全員には触れられないが、歌とオーケストラが刺激し合うのがオペラの面白さで、俄然《エレクトラ》の美しくも禍々しい世界観が浮かび上がる。マエストロはときには自ら歌いながら(見事な歌声!)、歌詞の表現とアンサンブルを整えて、その上でオーケストラに最大限の表現を要求していく。さらに3日目のリハーサルでノットならではのライヴ感が注入されることで、見事な《エレクトラ》が実現するに違いない。

ハンナ・シュヴァルツ(c)TSO

 ところで、3月に行ったヴィオラパートのメンバーのインタビュー記事(前編後編)で、第1ヴィオラが曲中ヴァイオリンに持ち替えて第4ヴァイオリンを担当することに注目した。持ち替えは3回という前提だったが、その後ノットからの指示で1回目の部分はカットされて、今回の持ち替えは2回となる。指示が来る前から楽員たちが自主的に分奏して、全て弾く前提で準備していたという。結果的に持ち替え1回目はなくなったが、ここに象徴されるような丁寧な準備が演奏水準に反映されていることは付言したい。なお、持ち替えの機会は終盤にあるので、ぜひご注目を!

 今回の《エレクトラ》は5月12日と14日の2回の予定だが、14日サントリーホール公演は既に完売。まだ残席があるのは12日ミューザ川崎の公演のみ。上記リハーサルはミューザ川崎シンフォニーホールで行われており、すべての準備をした舞台そのままでの上演を体験できる。日本で18年ぶりの《エレクトラ》、その貴重なチャンス、ご検討中の方はぜひともミューザ川崎で!

R.シュトラウス《エレクトラ》
(演奏会形式/全1幕/ドイツ語上演/日本語字幕付き)

2023.5/12(金)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
※5/14(日)のサントリーホール公演は完売

指揮:ジョナサン・ノット(東京交響楽団音楽監督)
演出監修:サー・トーマス・アレン

エレクトラ:クリスティーン・ガーキー(ソプラノ)
クリソテミス:シネイド・キャンベル=ウォレス(ソプラノ)
クリテムネストラ:ハンナ・シュヴァルツ(メゾソプラノ)
エギスト:フランク・ファン・アーケン(テノール)
オレスト:ジェームス・アトキンソン(バリトン)
オレストの養育者:山下浩司(バス)
若い召使:伊藤達人(テノール)
老いた召使:鹿野由之(バス)
監視の女:増田のり子(ソプラノ)
第1の侍女:金子美香(アルト)
第2の侍女:谷口睦美(メゾソプラノ)
第3の侍女:池田香織(メゾソプラノ)
第4の侍女/クリテムネストラの裾持ちの女:髙橋絵理(ソプラノ)
第5の侍女/クリテムネストラの側仕えの女:田崎尚美(ソプラノ)

管弦楽:東京交響楽団
合唱:二期会合唱団

問:ミューザ川崎シンフォニーホール044-520-0200
https://www.kawasaki-sym-hall.jp/elektra/