新進気鋭の評論家と音楽について「考え、語り合う」
箕面市立メイプルホールの音楽ラインナップ「身近なホールのクラシック」は国内外の注目アーティストによるバラエティ豊かなプログラムで構成されるが、コンサートと併せて、聴衆の好奇心を刺激するような生涯学習講座を提案していることも大きな特徴である。
2023年度に開講される「箕面おんがく批評塾」は、そうしたメイプルホールの講座のなかでも、とりわけ意欲的でオリジナリティに溢れるものだ。塾長を務める布施砂丘彦は日本のクラシック音楽界でもっとも若い音楽評論家のひとりだが、20代にしてクラシック音楽専門誌や全国紙の批評に名を連ね、その鋭い批評眼は高く評価されている。コントラバス奏者でもある布施は、音楽団体「ミヒャエル・ハイドン・プロジェクト」や音楽祭「箱根おんがくの森」といった斬新な企画の主宰者としても知られる。
この講座は「批評塾」と銘打ってはいるが、評論家の養成を目的としているわけではない。布施が目指しているのは「音楽とは何か」を徹底的に考え、語り合う場を作り出すことである。全8回の講座では、布施によるレクチャーだけでなく、箕面の自然のなかで作品を「つくる」フィールドワークも行われる。参加するのに楽譜が読めたり、楽器が演奏できたりする必要もない。この講座の根底には「音楽は聴き手のなかでかたちづくられるものであり、音楽の作り手は常に聴衆である」という布施の考えがあり、参加者に求められているのは音楽に真摯に耳を傾ける姿勢だけだ。若き音楽評論家とともに、音楽を聴くことの意味をじっくりと探究してみるのはいかがだろう。
文:八木宏之
(ぶらあぼ2023年5月号より)
2023.6/10(土)、6/25(日)、7/9(日)、9/24(日)、10/9(月・祝)、10/28(土)、11/19(日)、12/3(日)
各日14:00 大阪/箕面市立西南生涯学習センター ホール
問:箕面市立西南生涯学習センター072-723-5222
https://minoh-bunka.com