音楽的故郷でつながる二人が呼応する協奏曲
小林研一郎は、1974年のブダペスト国際指揮者コンクールで第1位を獲得して以来、ハンガリー国立交響楽団(現・ハンガリー国立フィル)の音楽総監督を務めるなど、ハンガリーとの結びつきが非常に強い。ピアニストの金子三勇士は、ハンガリー人の母を持ち、6歳でハンガリーに渡り、ブダペストのリスト音楽院で学んだ。そんな同国との縁の深い二人が、日本フィルハーモニー交響楽団の3月定期演奏会で、ハンガリーを代表する作曲家、リストのピアノ協奏曲第1番を共演する。金子にとってはもちろん十八番のレパートリーであり、華麗なテクニックを披露するに違いない。また、リスト音楽院名誉教授である小林にとってもリストは得意とする作曲家だ。リストへの共感に満ちた演奏が聴けるであろう。
そして後半に取り上げられるのが、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。どちらの曲も「変ホ長調」であることが興味深い。小林は、大晦日のベートーヴェン全交響曲演奏会の指揮を14回務めただけでなく、桂冠名誉指揮者を務める日本フィルとも過去にベートーヴェンの交響曲ツィクルスに取り組むなど、ベートーヴェンをもっとも重要なレパートリーの一つとしてきた。日本フィルの3月の東京定期演奏会では、80歳を超え、まさに円熟の境地にいる小林が40年以上にわたってコラボレーションを続けている日本フィルとともに、集大成ともいうべき「英雄」を聴かせてくれるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2023年3月号より)
第748回 東京定期演奏会〈春季〉【配信あり】
2023.3/3(金)19:00、3/4(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp