銀座ぶらっとコンサート #179 中木健二 “ロマンティックが止まらない 3”

気鋭のピアニストとともに心に響く名曲を

 さまざまな音楽家と室内楽を演奏しているチェリストの中木健二が、葵トリオのピアニスト、秋元孝介と組んで「銀座ぶらっとコンサート」の“ロマンティックが止まらない 3”に登場。題して「ロマンス!!」。ビゼー、ベートーヴェン、ドヴォルザーク、ブラームスの作品で1700年製ヨーゼフ・グァルネリを存分に歌わせ、馨しく上質で豊かなロマンを表現する。

 「私はいま、ベートーヴェンのフィルターを通して他の作曲家を見るというプログラム構成を考え、いろんな形で演奏しています」

 こう語る中木は、今回のプログラムでもベートーヴェンの「魔笛の『恋を知る男たちは』の主題による7つの変奏曲」を選曲し、恋の歌から名曲までを組み合わせ、チェロとピアノで情熱的なデュオを聴かせる。ふたりは作品の裏側に潜むエピソードなどにも触れ、聴き手を名曲の内奥へといざなっていく。

 ビゼー/ホールマンの「カルメン・ファンタジー」ではチェロとピアノの丁々発止の音の対話が堪能でき、ベートーヴェンでは主題が幾重にも変容していく変奏曲の妙が楽しめる。ドヴォルザークの「孤独な私の魂に」は中木の自家薬籠中の作品。えもいわれぬ郷愁の念が潜み、悲哀を込めた旋律に心が震える。ブラームスの「チェロとピアノのためのソナタ第2番」は晩年の円熟した作曲技法が堪能できる。チェロとピアノの多種多様な奏法がちりばめられ、両楽器から作曲家の想いが湧き上がってくるから。そのロマンを全身に纏いたい。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2023年2月号より)

2023.2/14(火)13:30 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
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