12シーズンぶりに都響登場のマエストロが贈るフランス・プロ
ヤン・パスカル・トルトゥリエが12シーズンぶりに都響の指揮台に帰ってくる。名チェリスト、ポールを父に持ち、BBCフィルやアイスランド響などで要職を歴任した大ベテランだ。今回は母国フランスの隠れ名曲てんこ盛りのプログラムで、シンフォニック音楽の醍醐味を堪能させてくれる。
まずはフォーレのパリ音楽院長時代の1913年に初演されたオペラ《ペネロープ》より前奏曲。そこはかとない哀愁を漂わせたフォーレの旋律と和声が、夫の帰還を待ちわびる主人公ペネロープの気分を描き出す。美しく切ない音楽だ。
続いてフローラン・シュミット「管弦楽とピアノのための協奏交響曲」(1928-31)。ドビュッシーとラヴェルの中間世代にあたる作曲家で、精緻な書法を持ち、エキゾティシズムや妖しさ、官能美を描かせたら右に出る人はいない。協奏交響曲はそんなシュミットの奇怪ぶりが壮大なスケールで炸裂する尖った作品だ。咆哮するオーケストラにピアノが超絶技巧で挑み、激しい闘争を繰り広げたかと思えば、耽美と夢の世界に遊ぶ。滅多に聴けない曲だが、独奏の阪田知樹の強い要望で実現したというから、熱い演奏が期待できそう。
メインには1880年代にパリで起こった交響曲創作の波の、美しい成果の一つであるショーソンの交響曲変ロ長調(1889-90)。郷愁を湛えて始まり、悲哀と喜びの間をさまよう。冒頭の儚いテーマは、フランス交響曲のお約束とも言うべき循環形式によって結尾で回想されるが、悲しみが高まったところで突如、輝かしい光が差し込み、深い安寧が訪れる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年2月号より)
第967回 定期演奏会Bシリーズ
2023.2/14(火)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp