原田慶太楼(指揮) 東京交響楽団

若きマエストロが届ける現代邦人作品の魅力

 近年、中堅・若手指揮者たちを中心に邦人管弦楽曲演奏の新しい波が起こっている。

 21世紀に入ろうとする頃から在京オケのシェフに外国人指揮者が就くようになったが、邦人作品にとっては受難の時代となった。彼らは日本の作曲界の歴史や現状には疎かったからだ。しかし私たちは日本人。西洋の名曲だけでなく、同じ国・時代の空気を吸う作曲家たちがどんな音楽を紡ぐのかにも興味がある。在京オケにポストを持つ中堅・若手クラスの指揮者たちは、そうしたニーズを掬いあげようとしているようだ。しかも、そこで取り上げられる新作・近作は旋律も調性もあったりする。

 2021年、東京交響楽団の正指揮者に就任した原田慶太楼も、その一人。原田が就任直後に行ったのは、子どもたちからメロディーを募集し、それを素材に若手作曲家が新曲を作るという企画。そこで選ばれた新進・小田実結子に、改めて委嘱した「Kaleidoscope of Tokyo」が今回世界初演される。彼女は同時代の東京をどう表現するのだろうか。

 そしてメインには菅野祐悟の「交響曲第2番“Alles ist Architektur” −すべては建築である」。菅野といえばテレビや映画の劇伴でおなじみだが、近年は本格的な交響作品も精力的に発表している。本作も2019年に初演されて大きな反響を呼んだ。菅野こそ、時代の空気を作品へと結実させる代表者と言えよう。

 この二作の間で、パワフルなピアニズムで聴衆を魅了してきたアレクサンダー・ガヴリリュクがグリーグのピアノ協奏曲を弾く。新しい作品に挟まれて、古典的名曲がどう聴こえてくるのだろうか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2023年1月号より)

第707回 定期演奏会 
2023.2/19(日)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp