東京文化会館 《響の森》Vol.51 ニューイヤーコンサート2023

新たな年の幕開けに響くスラヴの旋律

 2023年の幕開けを飾る東京文化会館《響の森》の「ニューイヤーコンサート」では、藤岡幸夫が東京都交響楽団を指揮する。プログラムはドヴォルザークのチェロ協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第5番の2曲。親しみやすいメロディにあふれたスラヴの名曲が並ぶ。

 ドヴォルザークのチェロ協奏曲でソリストを務めるのは、注目の新鋭、上野通明。2021年ジュネーヴ国際音楽コンクールチェロ部門で日本人として初めての優勝を獲得するなど、輝かしいコンクール歴を誇る若手である。パラグアイに生まれ、幼少期をスペインで過ごした後、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースで毛利伯郎に師事。19歳で渡独してピーター・ウィスペルウェイに学び、さらにエリザベート王妃音楽院にてゲイリー・ホフマンにも師事している。チェリストにとっての試金石ともいうべき決定的な名曲に対して、どんなアプローチで臨むのか、大いに注目される。

 指揮の藤岡幸夫は関西フィル首席指揮者と東京シティ・フィル首席客演指揮者を務めている。東京では東京シティ・フィルや日本フィルとの共演が多いが、今回は都響とのコンビ。都響の特徴について「とにかくサウンドがゴージャス」と語る藤岡だけに、壮麗な響きを堪能させてくれることだろう。チャイコフスキーの交響曲第5番といえば高揚感あふれるフィナーレの印象が強いが、藤岡によれば「暴れまくって勝利をつかもうとしてもつかめない曲」だという。名曲の核心に迫る演奏を期待できそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年11月号より)

2023.1/3(火)15:00 東京文化会館
問:東京文化会館チケットサービス03-5685-0650 
https://www.t-bunka.jp