名手が彩りを添える、ツィクルス最終回
2014年度シーズンから東京交響楽団の音楽監督を務めるジョナサン・ノットが15年7月に交響曲第5番「運命」で同楽団と始めたベートーヴェン交響曲シリーズが、今年11月の定期演奏会の交響曲第2番で遂に完結する。本来であれば、2020年4月の第2番で交響曲全曲演奏が完遂される予定であったが、コロナ禍のためにその演奏会は中止となり、今回あらためて同曲が取り上げられることになった。ノットのベートーヴェン演奏は、古楽的なアプローチをも取り入れた即興性や自由度の高さが特徴的である。9シーズン目を迎え、まさに阿吽の呼吸のノット&東響のコンビが、若きベートーヴェンの情熱あふれる交響曲第2番でどのような境地を聴かせてくれるのか、期待せずにはいられない。
コンサート前半では、シューマンの「マンフレッド」序曲とヴァイオリン協奏曲が演奏され、協奏曲ではアンティエ・ヴァイトハースが独奏を務める。ベルリン生まれの彼女は、ハノーファー国際コンクール、ライプツィヒのバッハ国際コンクール、クライスラー国際コンクールを制した名手。ダニエル・ゼペック、タベア・ツィンマーマン、ジャン゠ギアン・ケラスとともに組むアルカント・カルテットの第1ヴァイオリン奏者としても知られている。ドイツ正統派のヴァイトハースが、難曲ゆえに演奏される機会が少ないがその濃密なロマンティシズムで聴き手を魅了するシューマンのヴァイオリン協奏曲をどう演奏するのか楽しみである。
文:山田治生
(ぶらあぼ2022年11月号より)
第706回 定期演奏会
2022.11/26(土)18:00 サントリーホール
川崎定期演奏会 第89回
11/27(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
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