関西古楽界の雄が対峙する、バッハ器楽曲の傑作
西日本の常設演奏団体で、もっとも頻繁に東京公演をおこなう楽団はどこか。日本テレマン協会だ。年間5回の定期演奏会を、上野の東京文化会館で開催する。かつての名称「大阪テレマン協会」の冠を「日本」に変えたのが1979年。ほどなくして東京で定期演奏会を始めた。協会にとって首都でのコンサートは、「日本」を名前に戴く矜持のあらわれだ。
音楽監督・指揮の延原武春は、明確な方針を持って上野での公演に臨んでいる。「お江戸のお客さまは本格的なプログラムがお好き」。その直感から「バッハ・器楽作品・全曲演奏」路線を導いた。
その象徴が11月の「ブランデンブルク協奏曲全曲公演」である。バッハ畢生の傑作器楽曲集。多くの音楽ファンが、いちどは耳にしたことのある作品群だが、一晩で全曲ライブの機会となるとそうそう得られるものではない。
それを敢えてする。しかも毎年、趣向をいくぶんか変えながら。そこに日本テレマン協会らしさが色濃くにじむ。聴衆の求めに応じつつ、生演奏の活き活きとした即興性を失わない。
こうした挑戦を楽団の若手に任せるのも、延原の戦略のひとつだ。12月には高田泰治(チェンバロ)による「ゴルトベルク変奏曲」、来年1月には鷲見敏による「無伴奏チェロ組曲」の両全曲演奏会を開催する。彼らも毎年、様々な角度からバッハの作品世界に迫っている。
延原の老練の深慮と、若い演奏家の新鮮な取り組みとが、今年も東京で火花を散らす。
文:澤谷夏樹
(ぶらあぼ2022年11月号より)
第291回 2022.11/9(水)18:00
第292回 12/10(土)14:30
第294回 2023.1/20(金)18:00
東京文化会館(小)
問:日本テレマン協会06-6345-1046
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