中期の傑作に浸り、楽聖へ想いを馳せる
理知的なアプローチと洗練されたタッチで聴衆を惹き込むピアニスト近藤伸子。「Kondo Nobuko Plays Beethoven」は2019年からスタートしたシリーズで、毎回ベートーヴェンのピアノ・ソナタと室内楽作品とを組み合わせた曲目で構成している。
コロナ禍もその歩みを止めることなく続け、5回目となる今年は「『新しい道』へ」と題し、幕開けには軽快かつ技巧的なソナタ第11番を、そしてop.31の3つのソナタ(第16番、17番「テンペスト」、18番)をプログラムの中心に据える。難聴の苦しみを克服し、自ら「新しい道を歩む」と宣言したベートーヴェンが、さらに独自の新境地へと突き進んでいった時期のソナタである。室内楽作品は、バリトンの大沼徹を迎えて、歌曲集「遙かなる恋人に」を披露する。ベートーヴェンの創作中期から後期へと入る時代に書かれた作品だ。円熟味を増した調べを、二人のアンサンブルで存分に堪能したい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2022年11月号より)
2022.11/8(火)19:00 東京文化会館(小)
問:東京コンサーツ03-3200-9755
https://www.tokyo-concerts.co.jp