アンリ・バルダ ピアノ協奏曲の夕べ

モーツァルトとショパン、待望の組み合わせで聴く名匠の深遠

 これまで来日公演のたびに聴衆を驚かせてきたフランスの巨匠アンリ・バルダが再びやってくる。2021年公演ではラフマニノフの難曲、ピアノ協奏曲第3番を東京交響楽団と共演して満場の喝采を浴びたが、今回は「ジュノム」の愛称で知られるモーツァルトの傑作ピアノ協奏曲第9番、そしてショパンのピアノ協奏曲第2番を弾く。指揮は横山奏(2018年東京国際音楽コンクール〈指揮〉第2位)、オーケストラは横浜シンフォニエッタ。横山&横浜シンフォニエッタはモーツァルトの交響曲第31番「パリ」も演奏する。

 アンリ・バルダの演奏の魅力は、なんと言ってもその豊かな音色から生み出される万華鏡のような多彩な音楽だ。ピアノ・ソナタでも協奏曲でも、それまでに聴いたことのないような世界が広がる。フランス人らしい豊かな感受性、素晴らしいテクニックと音楽への深い理解から作られるバルダの世界は、ピアノ音楽が持つ本当の奥深さを教えてくれる。

 今回のプログラムは2曲ともバルダが演奏することを強く願っていた作品だという。モーツァルトのシンプルな音の世界、そしてショパンの抒情性豊かな世界。その対比も興味深いが、さらにそれぞれの作品の奥に潜んでいる音楽の真実というものを、彼の演奏は感じさせてくれるに違いない。80歳を超えても、音楽に対する真摯な追究をやめることのない彼の姿勢は、若いアーティストにも刺激を与えることだろう。この秋の“聴きもの”のひとつとなるに違いない。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年11月号より)

2022.11/8(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777 
http://www.concert.co.jp