次世代の巨匠が響かせる大作曲家への出発点
東京芸術劇場と事業提携を結ぶ読売日本交響楽団によるコンサートシリーズに、“チェコの次世代を担う指揮者”トマーシュ・ネトピルが登場する。演目はマーラーの歌曲集「さすらう若人の歌」と交響曲第1番「巨人」。東京芸術劇場は、シノーポリ&フィルハーモニア管のマーラー交響曲全曲演奏で開館以来数々の名演が行われてきた、同作曲家の響きに相応しいホール。読響は、同シリーズの井上道義指揮によるマーラーの交響曲第8番、第3番、「大地の歌」で絶賛を博してきた楽団。そしてネトピルは、ボヘミア生まれのマーラーに強く共感し、その作品を得意としている指揮者…とすべてに条件が揃った公演だ。
ネトピルは、現在エッセン歌劇場とエッセン・フィルの音楽総監督、チェコ・フィルの首席客演指揮者を務め、ベルリン・フィルやウィーン国立歌劇場をはじめとする一流楽団や歌劇場に多数客演している上昇株。マーラーもエッセン・フィルと録音した交響曲第6番、第9番の明晰かつ劇的な演奏が高く評価されている。日本でも2019年読響との雄弁な快演で強いインパクトを与えており、相性の良い楽団と十八番作曲家を奏でる本公演への期待は極めて高い。
「巨人」はオーケストラの醍醐味満載の名曲だが、今回は前に「さすらう若人の歌」(日本を拠点に活動し、芸劇のオペラシリーズ等の実績も顕著なロシア生まれのバリトン、ヴィタリ・ユシュマノフの独唱も要注目)が置かれているのがポイント。同曲集の第2曲、第4曲の旋律が「巨人」で用いられるなど、両曲は密接な関係にあるので、続けて聴く意味はすこぶる大きい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年10月号より)
2022.11/20(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
https://www.geigeki.jp