マイスター・アールト × ライジングスター オーケストラ

世代を超えた実力派奏者が集結
音楽祭独自のスペシャル・オーケストラ

文:山田治生

 NHK交響楽団の第1コンサートマスターを務め、北九州市文化大使でもある篠崎史紀(愛称“まろ”)が率いる「マイスター・アールト×ライジングスターオーケストラ」は、北九州国際音楽祭の独自企画であり、同音楽祭の名物となっている。

「マイスター・アールト×ライジングスターオーケストラ」は、国内主要オーケストラの主力奏者たちやソリストからなる「マイスター・アールト」組と優秀な若手奏者「ライジングスター」組とからなる、この音楽祭のために編成されたオーケストラで(今年は総勢38名)、コンサートマスター篠崎のもと、指揮者なしで演奏する。頭文字をとって“Maroオケ”とも呼ばれる。

篠崎史紀(c)井村重人

 今年のプログラムは、プロコフィエフの交響曲第1番「古典交響曲」、モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」、ベートーヴェンの交響曲第7番の3曲。

 「マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ」は、同音楽祭第20回にあたる2007年のガラ・コンサートでのオーケストラが発端であった。2009年のフィナーレ・ガラ・コンサート、2012年は「マイスター アールト ロマンティカー オルケスター」として、2013年のプレミアム・ガラでは「北九州祝祭弦楽合奏団」としての演奏を経て、2014年から未来を担う若手演奏家も参加し、現在の名称で、毎年、編成されている。変わらないのは、指揮者を置かず、コンサートマスター篠崎がアンサンブルをリードすること。そして、篠崎だけでなく、ヴァイオリンの双紙正哉、クラリネットの田中香織、ファゴットの長哲也ら地元北九州市出身の音楽家が積極的に参加していること。過去のプログラムを見ると、「ライジングスター」組には、ミュンヘン・フィルのコンサートマスターに就任した青木尚佳、東京交響楽団のコンサートマスターになった小林壱成、ソリストとして活躍するヴァイオリンの大江馨、カルテット・アマービレのヴィオラ奏者と新日本フィルの首席奏者を兼務する中恵菜、東京都交響楽団のチェロ首席奏者に就任した伊東裕、カルテット・アマービレのチェロ奏者だけでなく、多彩に活躍する笹沼樹ら、まさに「期待の星」たちが名を連ねている。

Maroオケ(c)2021北九州国際音楽祭

 筆者は、2012年に彼らの演奏するベートーヴェンの第7番を聴いたとき、70人のオーケストラに勝るとも劣らないスケールの大きな音楽に驚いた。と同時に、アイ・コンタクトなどを通じて、室内楽的なコミュニケーションにも感心した。篠崎のちょっとした溜めや呼吸の変化にもみんなで反応する。メンバー一人ひとりが積極的で、そんな彼らの気持ちを一つにまとめあげるのもコンサートマスターの篠崎の役割のように思われた。「古典交響曲」もベートーヴェンの第7番も彼らの十八番といえるレパートリーであり、今回も熱い演奏が期待できる。

■マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ
コンサートマスター:篠崎史紀(N響第1コンサートマスター/北九州市文化大使)
2022.11/12(土)15:00 北九州市立響ホール

●曲目
プロコフィエフ:交響曲第1番 ニ長調 op.25 「古典交響曲」
モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調 K.504「プラハ」
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.92
●料金
S席¥5,000 A席¥3,500 U-25(A席)¥2,000