下野竜也&N響がいざなうオペレッタ黄金時代

左:下野竜也 ©Nanako Ito
右:三浦文彰 ©Yuji Hori

 N響2月定期のCプログラムは下野竜也が登場、極上のオペレッタの世界を堪能してもらう。

 オペレッタは19世紀半ばに芸術の都パリで発展し、その後ウィーンでも盛んになったジャンル。コンサートはまずウィンナ・オペレッタの父と呼ばれるフランツ・フォン・スッペの「軽騎兵」序曲で始まる。金管の荘重なファンファーレはテレビなどで誰しも耳にしたことがあるのではないだろうか。スッペからはもう一つ、劇付随音楽「詩人と農夫」序曲。序奏でチェロが「線路は続くよどこまでも」に似た旋律を歌う。スッペは軽快なだけでなく、オーケストレーションががっちりしていてパンチの効いたサウンドが楽しめる。

 メインにくるのはバレエ音楽「パリの喜び」。これはパリのオペレッタ界で寵児になったジャック・オッフェンバックの名作の数々から人口に膾炙した旋律を選り抜き、マニュエル・ロザンタールが1938年に編んだもの。ワルツ、マズルカ、ポルカといった舞曲や「天国と地獄」のにぎやかなフレンチカンカンをドラマティックにつなぎ、「ホフマンの舟歌」でしっとりと閉じる。聴きどころが数珠繋ぎになっている。

 人気ヴァイオリニスト三浦文彰が登場して、オッフェンバックと同時代に活躍したサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番を演奏するのにも注目だ。こちらはシリアスでロマンティックな音楽で、当時のパリの音楽界の多様性も実感できるだろう。本作は三浦が下野との初共演で取り上げた曲で、磨きのかかった演奏が期待できる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年2月号より)

下野竜也(指揮) NHK交響楽団
第2033回 定期公演 Cプログラム
2025.2/21(金)19:00、2/22(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp