東京オペラシティ B→C 佐藤采香(ユーフォニアム)

注目の実力派が描く、魅惑の楽器の新世界

(c)Ayane Shindo

 ユーフォニアムはまろやかで情感豊かな楽器だが、一般ファンの馴染みはやや薄い。そこで注目したいのが、東京オペラシティ名物「B→C」の佐藤采香の公演だ。東京藝大で学んだ佐藤は、この楽器の最高峰たるリエクサ国際コンクールで2018年日本人初の優勝を果たした注目の逸材。同年から2年間スイスのベルン芸術大学に留学し、持ち前の名技に更なる磨きをかけている。

 「自身の軌跡を重ねた“セルフポートレート”」を旨とする本公演は、ベルン時代に学んだというバッハのフルート作品、ユーフォニアムのレパートリーの一つヘルツキの作品、佐藤の初委嘱作・久保哲朗の「Beans」に基づく新組曲、人生に感銘を受けたナディア&リリー・ブーランジェの作品、そして留学中に出会った双子作曲家・向井響&航の斬新な手法を用いた委嘱新作と、意欲満々なプログラム。佐藤の豊麗かつ密度の濃い演奏は、自身の音楽性の高さとユーフォニアムの可能性を鮮やかに伝えてくれる。彼女が「自分自身の全て」と語るこのリサイタルで、その魅力を存分に堪能したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年9月号より)

2022.9/20(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp
9/24(土)14:00 高松/穴吹学園ホール(せとうち観光専門職短期大学内)
問:穴吹学園ホール087-844-3511 
https://web.seto.ac.jp/anabukihall/