ピアニスト久元祐子さんにインタビューしました!

 先日、11月23日に「モーツァルト・ソナタ全曲演奏会 vol.6〈最終回〉」を開催する久元祐子さんにインタビューを行いました。2016年にスタートした同シリーズは、コロナ禍でのおやすみをはさんで、今秋ついに完結します。

 ウィーンなどでも活躍されてきた久元さんは、オリジナル楽器を用いた演奏会も多数開催されてきました。そして、日本では数少ないベーゼンドルファー・アーティストの称号を持つピアニストでもあり、ベーゼンドルファー、プレイエル、エラールなどの歴史的鍵盤楽器を所有しています。
 今回の取材では、久元さんの演奏も聴かせていただきながら(!)様々なお話を伺ってきました。

左:ミヒャエル・ヴァルカー(1995年製作)のクラヴィコード
中央:アントン・ヴァルター1795年の復元楽器/ウルバーノ・ペトロゼッリ 2012年製作)
右:ヨハン・アンドレアス・シュタイン(1788年の復元楽器/ヴォルフガング・ズッカーマン 1980年製作)

 まずはミヒャエル・ヴァルカー(1995年製作)のクラヴィコード。小型の鍵盤楽器で、モーツァルトはこのタイプの楽器を旅先で愛用していたそう。
 次に、モーツァルトがウィーンで愛用していたとされるアントン・ヴァルター(1795年:ニュルンベルク国立博物館所蔵)のフォルテピアノ。イタリア・ペルージャの製作家、ウルバーノ・ペトロゼッリによる復元楽器(2012年製作)です。
 続いて、モーツァルトと同時代に活躍し、いわゆるウィーン式アクションによるピアノの代表的な製作家であるヨハン・アンドレアス・シュタイン(1788年:ニュルンベルク国立博物館所蔵)のフォルテピアノをモデルに、ヴォルフガング・ズッカーマン(1980年製作)が復元製作した楽器。

左:プレイエル(1843年製作/パリ/製造番号10717)
右:エラール(1868年製作/パリ/製造番号39608)

 そして、プレイエル(1843年製作/パリ/製造番号10717)は、ショパンが生きていた時代の貴重なオリジナル楽器です。柔らかく繊細な音からは、サロンで演奏するショパンの姿が連想されました。
 続いてもオリジナルのエラール(1868年製作/パリ/製造番号39608)。華やかでよく響く音は、リストのイメージにぴったり! 同時代を生きたショパンやリストも、久元さんのこのピアノを弾いたかも!?

左:ジョン・ブロードウッド(1810年頃製作/ロンドン/製造番号5132)
右:ヨハネス・ルッカース(1624年の復元楽器/マルク・デュコルネ 2015年製作)

 木目が美しいジョン・ブロードウッド(1810年頃製作/ロンドン/製造番号5132)のオリジナル楽器。ブロードウッド社は1782年設立のピアノメーカー。ベートーヴェンが後期のソナタを作曲していた頃には同型のピアノを使用していました。
 そして、フランドルの名工、ヨハネス・ルッカースの1624年製モデルを復元製作したマルク・デュコルネ(2015年製作)のチェンバロ。煌びやかで精巧な装飾が施されており、ルイ14世様式のスタンドは日本で唯一のもの。美しい椅子も特注だそうです! そのほか、ベーゼンドルファーやスタインウェイなどのモダンなグランドピアノも拝見しました。

久元さんとベーゼンドルファー280VC(ピラミッド・マホガニー)

 11月の演奏会で使用されるのは、現代の名工がつくる「ベーゼンドルファー280VC(ピラミッド・マホガニー)」。貴重な木材を使用し、久元さんのために製作されたベーゼンドルファー。鍵盤の低音部側には、久元さんのお名前が刻印されています。コロナ禍がはじまる直前に日本に到着し、2020年には紀尾井ホールでお披露目リサイタルが開催されました。久元さんは、「長い伝統と名工達の情熱によって生まれた楽器たちは、多くのことを教えてくれます」と語っていました。次回の演奏会はその特別な音色を聴ける貴重な機会となります。

 ぶらあぼ10月号(9/18発行)では、公演についてのインタビューを掲載予定です。どうぞお楽しみに!

久元祐子 モーツァルト・ソナタ全曲演奏会 vol.6 〈最終回〉2022.11/23(水・祝)14:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
モーツァルト:
ロンド ニ長調 KV485
ロンド イ短調 KV511
ピアノ・ソナタ ヘ長調 KV533/KV494
ピアノ・ソナタ ハ長調 KV545
幻想曲 ハ短調 KV475
ピアノ・ソナタ ハ短調 KV457

問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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