久元祐子 ピアノリサイタル

暗から明へと彩られる味わい深いプログラムを名器の響きで

C)武藤 章

 さまざまな時代の多様な特性をもつ鍵盤楽器を自在に操るスペシャリスト、久元祐子。今年のリサイタルでは、久元が愛してやまないウィーンの老舗ピアノメーカー、ベーゼンドルファーの最新型280VC、しかも久元のために製作された「ピラミッド・マホガニー」という美しく貴重な木材が使用されたピアノを用いて、モーツァルトとベートーヴェンの世界へといざなう。

 前半のモーツァルトは緊張感と影を感じさせるハ短調の幻想曲(K.475)とソナタ(K.457)。同じハ短調の「悲愴」ソナタによってベートーヴェンの世界へとつなぎ、もともとは「ワルトシュタイン」ソナタの第2楽章として書かれたヘ長調の「アンダンテ・ファヴォリ」を経て、明るさと勢い、そして壮大な輝かしさを放つハ長調の「ワルトシュタイン」で締めくくる。暗から明へと彩られるプログラム全体の世界観は、ベートーヴェン生誕250年に聴く内容としても味わい深いものとなるだろう。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2020年11月号より)

2020.11/12(木)19:00 紀尾井ホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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