ヘンデル《シッラ》待望の日本初演
バロック音楽のスペシャリストが贈る『日本発信ならではのステージ』

 今年10月、神奈川県立音楽堂で上演されるヘンデルのオペラ《シッラ》のオンライン記者会見が5月19日に行われ、ファビオ・ビオンディ(指揮/ヴァイオリン)、彌勒忠史(演出)らが参加した。
 同公演は、神奈川県立音楽堂で室内オペラを紹介するプロジェクトの第5弾。当初は2020年に上演される予定だったが、新型コロナウイルス蔓延のため、公演日の3日前に中止となっていた。今回の公演では当時の出演者とスタッフらが再び集結し、待望の日本初演が実現する。

ファビオ・ビオンディ

 演奏はビオンディ率いるイタリア・古楽アンサンブル「エウローパ・ガランテ」。ソニア・プリナ(コントラルト/シッラ)、ヒラリー・サマーズ(コントラルト/クラウディオ)らバロック音楽のスペシャリストが出演。カウンターテナーであり、演出や執筆など多彩な活動を展開している彌勒忠史が演出を務める。

エウローパ・ガランテ

 中止となった前回の公演前には、イタリアを訪れてビオンディと準備を進めていた彌勒。「今回上演の機会を得られてとても嬉しいです。マエストロと世界的アーティスト、そして日本側スタッフとの協働も喜びです」と述べた。公演については、「今回は歌舞伎の要素を取り入れます。バロックとは時代的な共通項があり、光と陰のコントラストなど劇的な要素を持っている。舞台装置も使って観客が驚くような“スペクタクル”な表現をしてみたいと思います」と意気込みを語った。

彌勒忠史

 ビオンディは、今回イタリアのバロック・オペラを上演することの意義について次のようにコメントした。
「音楽は人間の普遍的な感情を表現することに適しています。怒り、絶望、喜びといった当時の人々が抱いていた感情を、現代の私たちも感じているということが観客にも伝わるのでは。神奈川県立音楽堂では過去にもオペラを上演していますが、観客の熱狂ぶりからも、文化や場所の違いを越えてそのコンセプトを理解していただけたと実感しています」
 バロック・オペラのストーリーについては、「歴史的な解釈も重要ですが、今の時代を生きる人々にどのようにアプローチしていくかということを考えています。彌勒さんによる演出がそれを手伝ってくれると思います」と期待を寄せる。オケの編成については「今も昔も“場所”によって変わる」とし、「音楽とは、その(演奏する)スペースに合わせた編成を作ることができる表現方法です。今回は現代の、そして神奈川県立音楽堂のスペースに合ったものを考えており、そのコンセプトが観客にも伝わるといいなと思います」と語った。

左:演出の打合せを行う彌勒忠史とビオンディ/©Ryoko Fujihara
右上:舞台セット(2020年2月、神奈川県立音楽堂)
右下:友好まり子による衣裳(2020年)

音楽堂室内オペラ・プロジェクト第5弾
ヘンデル《シッラ》全3幕(日本初演/イタリア語上演/日本語字幕付)

2022.10/29(土)、10/30(日)各日15:00 神奈川県立音楽堂

(ファビオ・ビオンディ、彌勒忠史によるプレトークあり)
6/25(土)発売
●出演
音楽監督:ファビオ・ビオンディ(指揮/ヴァイオリン)
演奏:エウローパ・ガランテ
ソニア・プリナ(コントラルト/ローマの執政官シッラ)
ヒラリー・サマーズ(コントラルト/ローマの騎士クラウディオ)
スンヘ・イム(ソプラノ/シッラの妻メテッラ)
ヴィヴィカ・ジュノー(メゾソプラノ/ローマの護民官レピド)
ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/レピドの妻フラヴィア)
フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/シッラの副官の娘チェリア)
ミヒャエル・ボルス(バス/神)
ほか
●Staff
演出:彌勒忠史
美術:tamako☆
衣裳:友好まり子
照明:稲葉直人(ASG)
台本・字幕翻訳:本谷麻子
舞台監督:大澤裕(ザ・スタッフ)

問 チケットかながわ0570-015-415