京都コンサートホールがアウトリーチ事業の第2期登録アーティストを発表

 京都コンサートホールは、2019年度よりアウトリーチ事業「Join us(ジョイ・ナス)! 〜キョウト・ミュージック・アウトリーチ〜」を実施している。ふだん様々な理由でホールなどに来館できない市民に向けて、クラシック音楽の喜びと楽しさを生演奏で届け、京都ゆかりの若手音楽家の活動を支援することを目的としたもので、オーディションで選ばれた若手音楽家たちによって、教育機関や福祉施設等でのアウトリーチ活動が展開されている。

左:鎌田邦裕 右:福田彩乃

 この第2期登録アーティストに、フルートの鎌田邦裕(かまた・くにひろ)、サクソフォンの福田彩乃(ふくた・あやの)の2組が採用された。5月23日、お披露目の記者会見が、同ホール・アンサンブルホールムラタのホワイエで行われた。

 鎌田邦裕は山形県鶴岡市出身。京都市立芸術大学・同大学院で学んだ。びわ湖国際フルートコンクールで入選、仙台フルートコンクール一般の部では第3位に入賞している。現在は京都と鶴岡を拠点に、オーケストラへの客演やソロ・室内楽にも積極的に取り組んでいる。
 鎌田は「子どもにも大人にも、まずは選り好みをしないで一度本物の音楽を聴いてもらい、クラシック音楽の本当の面白さや楽しさを感じてもらえるよう活動していきたい。これまでクラシックに触れたことのない方々に初めて音楽を届けるのは責任も大きいが、皆さんのリアルな反応を肌で感じられる上に、音楽家として成長できる非常にありがたい機会でもある」とコメント。自ら足を運んだ聴衆を前におこなうコンサートとは違い、アウトリーチならではの難しさを感じるというが、「音楽にはいろいろな楽しみ方があるので、聴くだけではなく、音を出すことの楽しさ、面白さ、難しさを伝え、“心を動かす力”を育てていきたい」と抱負を語った。

 福田彩乃は三重県出身で、京都市立芸術大学へ進学。現在は、同大学院博士(後期)課程に在籍しながら、京都を拠点に活動している。令和3年度京都市芸術新人賞を受賞。所属するNOK Saxophone Quartetのメンバーとしてアウトリーチに参加した経験をもつが、「音楽の魅力や楽しさはもちろん、一番伝えたいのは作品が作られた経緯であり、作品の歴史等に興味を持ってもらえるようなプログラムを組んでいきたい。音楽や楽器をより身近に感じるきっかけ作りができるアーティストになりたい」と意気込む。
 また、「京都には伝統的な文化や芸術がたくさんあり、それらを尊重し、誇りに思っている人が多いと思うので、その大切にする気持ちや関心を少しでも音楽に向けてもらえたら、京都という街がより活性化するのではないか」と期待を寄せた。

 この数年は、パンデミックの影響により、アウトリーチ事業にもさまざまな制約が生じているが、今年の活動は、研修を経たのち、秋からスタート予定。工芸・美術などさまざまな伝統が息づく街で、日本の文化とも向き合いながら、地域のさまざまな場所でクラシック音楽の魅力を伝えていく若き音楽家たちの活動に、今後も注目していきたい。

(取材協力・写真提供:京都コンサートホール)

京都コンサートホール
https://www.kyotoconcerthall.org