妻屋秀和、上野水香、奥村康祐らが芸術選奨文部科学大臣賞を受賞

 令和3年度(第72回)芸術選奨受賞者が発表され、音楽部門ではバスバリトン歌手の妻屋秀和が大臣賞を、三味線演奏家の本條秀慈郎が新人賞を受賞した。舞踊部門では、東京バレエ団プリンシパルの上野水香、新国立劇場バレエ団プリンシパルの奥村康祐が大臣賞を、新国立劇場バレエ団プリンシパルの井澤駿が新人賞を受賞した。
 芸術選奨は、芸術分野において優れた業績を挙げた個人または芸術各部門における新生面を開いた個人を選奨するもので、受賞者には賞状と賞金が授与される。
 贈呈式は、3月15日に都内で行われる予定。

妻屋秀和

〈音楽部門〉
◎大臣賞
妻屋秀和
(声楽家)

授賞対象:歌劇「ドン・カルロ」ほかの歌唱
贈賞理由:

妻屋秀和氏は日本を代表するバス歌手である。恵まれた才能とヨーロッパの歌劇場で培った豊かな経験を生かしつつ、長年、新国立劇場をはじめとする多くの舞台で常に存在感を示し、公演の成功に貢献してきた。令和3年はとりわけ活動が顕著で、コロナ禍で来日しなかった外国人歌手に代わっていくつかの主役級の役も高水準でこなし、その実力を広く再認識させた。なかでも新国立劇場「ドン・カルロ」におけるフィリッポ二世の圧倒的な歌唱は印象的であった。

本條秀慈郎

◎新人賞
本條秀慈郎
三味線演奏家)

授賞対象:「本條秀慈郎三味線リサイタルVII〜IX」の成果
贈賞理由:
本條秀慈郎氏は、三味線演奏家としてすでにジャンルを超えた活動を続けているが、特に令和3年の「微かに…高橋悠治と三味線三夜」と題したリサイタルにおいて非常に内容の濃い演奏を聴かせた。3夜(昼夜同演目の6公演)にわたる演奏は、独奏曲のほか、各回に義太夫三味線、京都の柳川三味線、ピアノとの共演というバラエティに富んだ演目を含み、これまでに磨き上げられてきた技量は、三味線という楽器に希望に満ちた未来を拓いた。

上野水香 (c)Kentaro Minami

〈舞踊部門〉
◎大臣賞
上野水香(バレエダンサー)

授賞対象:「ボレロ」ほかの成果
贈賞理由:

類いまれなプロポーションと柔軟性、個性的な面差しの上野水香氏は、牧阿佐美バレヱ団においてのデビュー当初から東京バレエ団プリンシパルである現在に至るまで、常に第一線で活躍している。令和3年は、長年踊ってきたベジャール振付「ボレロ」で新境地を拓き、アロンソ振付「カルメン」の表題役をより深い表現力で演じ、「海賊」のメドーラ役では華やかな存在感で全幕のドラマを牽引。トップ・プリマの圧倒的な輝きを放ち続けた。

奥村康祐 撮影:鹿摩隆司

◎大臣賞
奥村康祐(バレエダンサー)

授賞対象:「白鳥の湖」ほかの成果
贈賞理由:

奥村康祐氏は、国際コンクールでの入賞を重ねた後に新国立劇場バレエ団に入団。バレエ芸術の根幹をなす品位ある立ち居振る舞いにとりわけ優れ、新国立劇場バレエ団の主要なレパートリーに次々と主演してきた。今年度は古典名作「白鳥の湖」「ライモンダ」で踊りのスケールや力強さ、心理表現に著しい進境を示し、現代作品においても繊細な感性の光る名演が続いた。日本を代表するダンスール・ノーブル(貴公子ダンサー)の一人であり、さらなる活躍を期待させる。

 今年度もコロナ禍の影響を受けて、引き続き厳しい状況に置かれた音楽界。困難を乗り越えながら絶えず意欲的に取り組む芸術家の活動が、社会を明るく照らす力となっている。

〈令和3年度(第72回)芸術選奨受賞者一覧〉
音楽部門
大臣賞:妻屋秀和(声楽)
新人賞:本條秀慈郎(三味線)

舞踊部門
大臣賞:上野水香(バレエ) 奥村康祐(バレエ)
新人賞:井澤駿(バレエ)

文化庁
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