髙木日向子と上野通明が文化庁長官表彰(国際芸術部門)の表彰式に出席

左より:上野通明 都倉俊一文化庁長官 髙木日向子 提供:文化庁

 文化庁長官表彰(国際芸術部門)の表彰式が文化庁で行われ、今年度の表彰者5名のうち、髙木日向子(作曲)、上野通明(チェロ)の2名に、3月2日、都倉俊一長官より表彰状と賞牌が贈呈された。この表彰は、国際的に評価の高い賞を受賞、または国際コンクール等において優れた成果を収めるなど芸術分野において海外で活躍した個人に対して授与される。この日は奇しくもジュネーヴ国際音楽コンクールの覇者が顔を揃えることになった。

 1989年生まれ、兵庫県出身の髙木は、大阪音楽大学作曲学科を経て同大学院作曲研究室を修了。2019年のジュネーヴ国際音楽コンクールの作曲部門で優勝し、受賞作品「L’instant」が翌年の同コンクール・オーボエ部門の課題曲に起用されるなど、ヨーロッパでの評価も高い若手作曲家の一人。
 3月には自身初となる個展を開催する髙木は、「今回、表彰いただけたことを光栄に思っている。これからも気負わずに今まで通り活動していきたい。これから先も国内外で作品を発表できる機会があれば嬉しい」と喜びを語った。今後は、コンテンポラリーダンスやアートといった他ジャンルとのコラボレーションも活動の目標とする。6月には、新作が披露される演奏会とレコーディングがスイスで行われるため、現地に滞在予定。スイスのアンサンブル「Musique des Lumières」による企画で、ロシアの詩人による詩をテーマに、髙木を含めた様々な国の作曲家による委嘱作品が同時に初演される。さらに、テノールとピアノのための委嘱作品がジュネーヴで初演されるなど、海外での新作発表も進行中。

 昨年、ジュネーヴ国際音楽コンクール・チェロ部門で日本人初優勝の快挙を遂げた上野は、現在ドイツとベルギーを拠点に研鑽を積んでいる。5歳よりチェロを始め、2010年のルーマニア国際音楽コンクールでの優勝に続いて、2014年のヨハネス・ブラームス国際コンクールも制した。さらに、2018年、ルトスワフスキ国際チェロコンクールにおいて第2位に入賞するなど、多数の国際コンクールで活躍。これまでに読響、日本フィル、ワルシャワ国立フィルをはじめとした国内外のオーケストラと共演を重ねている。

 今回の表彰について上野は、「このような栄誉な賞をいただいたことを糧にして、自分の音楽に対して向き合い、より良い音楽家になれるよう精進していきたい。コロナによって多くの人が苦労され、さらに最近は悲しい出来事が起きていますが、音楽や芸術の存在意義を考えて、自分にできることをやっていきたい」と述べた。今後の活動については、「ジュネーヴのコンクールでの優勝をきっかけに、ヨーロッパでの演奏の機会が増えて嬉しい。日本でも演奏活動を続けながら、ヨーロッパを拠点に、クラシックの王道のレパートリーに加えて、自分が好きなマイナーな作品や、邦人作曲家の素晴らしい作品も紹介していきたい」とコメント。
 上野によると、2011年と2015年に岩谷時子音楽文化振興財団から表彰を受けた際、都倉は審査員を務めており、以前から長官とは親交があったという。また、2012年には、古事記1300年記念企画のために作曲された都倉の新作に上野が参加するなど交流が続き、今年1月に開催された上野のリサイタルにも足を運んでいる。

提供:文化庁

 表彰を受けた5名は海外在住者が多いこともあり、日程を分けて表彰式が実施されている。昨年12月には、佐藤晴真(チェロ)と岡本誠司(ヴァイオリン)の表彰がすでに行われており、今年4月、残る三浦謙司(ピアノ)の表彰式が予定されている。

〈文化庁長官表彰(国際芸術部門) 表彰者〉
上野通明(チェロ)
岡本誠司(ヴァイオリン)
佐藤晴真(チェロ)
髙木日向子(作曲)
三浦謙司(ピアノ)

文化庁長官表彰(国際芸術部門)
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