東京オペラシティ B→C 吉村結実(オーボエ)

鮮やかな色彩をまとうフランス近現代作品の愉悦

 オーボエといえば木管楽器の華。NHK交響楽団首席奏者としてすでにおなじみの顔となった吉村結実が、その華を満喫させるべく東京オペラシティ「B→C」に登場を果たす。

 2013年から15年にかけてのパリ留学が「人生で最も大きな出来事」と語る吉村らしく、プログラムの核をなすのは近現代のフランス音楽。それも多彩な面々が並ぶ。ラヴェルのピアノ曲からアレンジされた「ソナチネ」に横溢する変幻自在な色彩感。1930年代に芸術家集団“若きフランス”を共に立ち上げたメシアンとジョリヴェの小品から伝わる、両者の対照的な世界観のエッセンス。そのジョリヴェの弟子にあたるフィリップ・エルサン(1948〜)は、師から受け継ぐ“非西欧音楽への関心”にも立脚しながら、インドの伝統楽器に着想を求めて「シェーナイ」(2016)を書き上げた。同様にワールド・ミュージック的な作風で気を吐くティエリー・ペクー(1965〜)が19歳の若さで完成したソナタは、ミステリアスかつ奔放な音使いが魅力を放つ。指揮者としても活躍するジョルダン・ギュドファン(1988〜)の「白鳥の歌」(2014)は、ラヴェルにも通じる印象派風の筆致の中に、歌心と技巧の見せ場を満載……。

 以上の演目を額縁として取り囲むのが、演奏会の冒頭に配されたクープランの「趣味の融合または新しいコンセール第7番」と、最後を飾るバッハの無伴奏パルティータ。ともに舞曲の連なる組曲形式で書かれた作品を通じて、同時期にフランスとドイツで活躍した2人の巨匠の音楽的スタイルを描き分ける。そうした果敢な試みまで、しかと受けとめてみたいステージだ。
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2022年3月号より)

※吉村結実さんの「吉」の字は、正しくは「土」に「口」です。

2022.4/19(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 
https://www.operacity.jp