オペラの歌姫が多彩なレパートリーで魅了する
砂川涼子といえば、《トゥーランドット》の女奴隷リューといった「耐える娘」が当たり役の名ソプラノ。しかし、2月の「浜離宮ランチタイムコンサート」では、ベルカントの歌曲や日本語の名曲を中心に、楽しいひとときを作りたいと話す。
「前半はベルカントの三大作曲家(ベッリーニ、ロッシーニ、ドニゼッティ)を歌います。私が歌の勉強を始めたころに出会った美しいメロディの中から、自分の原点を辿るつもりで選曲しました。いま、歌を勉強されている学生の皆さんにも聴いていただきたいです」
ベッリーニの柔和な〈銀色の淡い月よ〉、ロッシーニの軽やかな〈アラゴネーズ〉などどれも清々しい名曲ばかり。一方で、ドニゼッティはオペラ《アンナ・ボレーナ》からフィナーレを。悲劇の王妃の絶唱といった、新境地が期待できそうである。
「私の声はドラマティックなものではないですが、溢れてくる感情を歌に込めたいと思って選びました。今回は園田君にも伴奏してもらえますので…」
え? 園田君って、名指揮者、園田隆一郎さんのこと?
「はい。五島記念文化賞の新人賞を同じ年に受賞した間柄で、普段は『園ちゃん』と呼ばせていただいたりします。たまに『園田先生』と丁寧にお呼びすると、『涼子先生!』と冗談ぽく返されます(笑)」
ローマやミラノに5年ほど留学した砂川。早くからオペラに出演したこともあり、リサイタルはまだ数回程度だそう。それだけに今回は貴重なステージになるだろう。ちなみに、当日は午前11時半開始で90分間とのこと。歌手には早過ぎないだろうか?
「私は、朝は大丈夫なんです。子どものお弁当を作るといった日常のルーティーンもありますしね。それに、大ソプラノのフィオレンツァ・チェドリンスさんから『歌劇場からいつ声がかかるかわからないから、どんな時でもすぐに歌えるよう準備しておいてね』とアドバイスをいただいたことがありまして、その通り、いろんな現場で鍛えられてきましたのでご心配なく!」
リサイタルの後半は日本歌曲と日本語オペラのアリア。
「この数年、日本語の曲を歌う機会が増えました。お客様の反応もダイレクトにいただけますから勉強になります。山田耕筰さんの名曲は、キャリアを積んだ今だからこそトライしたいと思いますし、中田喜直さんの〈霧と話した〉も本当に大好きなんです。また、三木稔先生の《静と義経》と團伊玖磨先生の《夕鶴》と、オペラの名場面も2つ選びました。つうはいつか必ず演じてみたい役ですし、静御前は先日、抜粋上演で歌ったばかりで、とても好きになりました。当日は、お客様との『心の距離が近いステージ』になればと願っています!」
取材・文:岸純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ2022年2月号より)
浜離宮ランチタイムコンサートvol.211 砂川涼子ソプラノ・リサイタル
2022.2/22(火) 11:30 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/