「第51回 ENEOS音楽賞」の表彰式が11月19日、東京都内で行われた。同賞は2020年「JXTG音楽賞」から現名称に変更。1971年の創設以来、半世紀にわたり、日本の音楽文化の向上に貢献した個人または団体に贈られてきた。
2021年度は、洋楽部門本賞を滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールと芸術監督の沼尻竜典、同部門奨励賞を広島交響楽団、邦楽部門を清元美寿太夫が受賞した。
洋楽部門本賞の贈賞理由を、選考委員の中村孝義は「創設以来、都市圏の劇場にも増して傑出した存在感を示し続けてきたびわ湖ホールは、初代芸術監督の若杉弘さんのもと、とりわけオペラの分野において創造的な取り組みを展開してきた。その後、若杉さんから引き継いだ第2代芸術監督の沼尻竜典さんは、ワーグナーや近現代のオペラ作品の上演で圧倒的な成功を成し遂げ、オペラにおいて欠くべからざる存在となっている。この2人の比類ない力量を評価したい。そして、芸術監督の招聘や劇場専属音楽家のサポートを行うなど、縁の下の力持ちとして成功に導いたびわ湖ホールの運営や制作力も高く顕彰する」とした。
受賞スピーチで、びわ湖ホール芸術監督の沼尻は「新勢力として業界のなかで時には古い因習に抗いながらも歩んできたびわ湖ホールも、創設から20年以上の年月が経った。23年の3月で芸術監督の任を退くが、それ以降もびわ湖ホール、そして私個人のことも応援していただけたら嬉しい」と語った。
続いて、館長の山中隆は「上演した個々の作品が評価されることも嬉しいが、創設以来の劇場運営に対して評価をいただいたことに職員一同感激している。今回の受賞を糧に、今後も芸術の灯を守り続けていきたい」と述べた。
一方、奨励賞の贈賞理由について、選考委員の舩木篤也は「広島交響楽団は、今世紀になってから終身名誉指揮者の秋山和慶さんのもとでアンサンブル能力を飛躍的に高め、意欲的な企画にも臨んできた。2017年以降は、下野竜也さんが音楽総監督に就き、これまでの姿勢と音楽的財産を引き継いでいる。被爆都市で生まれたオーケストラとして、長きにわたり音楽を通して平和を訴え続けてきた同楽団に敬意を評したい」とした。
受賞について広島交響楽団の理事長、東谷法文は「今回の受賞を励みに、被爆地広島で育まれた楽団として、演奏を通じて平和のメッセージを発信し続けるとともに、“世界に通用する楽団”の実現に向けて今後も頑張っていきたい」と喜びを語った。
昨年は、オンライン開催となった表彰式。今年は、会場で選考委員と受賞者が直に挨拶を交わす場面も見られた。