下野竜也(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

マエストロの十八番、ドイツ近代音楽の名作を集めて

 2022年に楽団創立50周年を迎える新日本フィル。9月開幕の新シーズンからこれまでの「ルビー」シリーズが「すみだクラシックへの扉」にリニューアル。名曲中心でも指揮者の個性が光るプログラムが話題だ。第3回は下野竜也が登場して、彼が得意とする近代ドイツ音楽の名曲を取り上げる。

 20世紀を代表するヴィオラ奏者としても知られるヒンデミット「白鳥を焼く男」は、ヴィオラ独奏と小管弦楽のための作品。全3楽章で4つのドイツの古い民謡が素材として用いられ、物騒なタイトルも民謡に由来する。独奏は名手、篠﨑友美(元新日本フィル首席奏者)。冒頭の無伴奏ソロ、第2楽章の子守唄、終楽章の「主題と変奏」の難技巧など聴きどころ満載だ。R.シュトラウス「メタモルフォーゼン」は、23本の弦楽器による作曲家最晩年の作品。美しい旋律がうねり変容する。下野の指揮は、しなやかな流れと絡み合う響きを堪能させてくれるだろう。

 この2曲をフンパーディンクの歌劇《ヘンゼルとグレーテル》の「前奏曲」と「夕べの祈り〜パントマイム」とで挟み込む。《ヘンゼル〜》はグリム童話が原作で子どもも楽しめるが、楽器編成が大きく、日本では経費等、大人の事情(?)もあってか、オペラの上演頻度は高くない。とはいえオーケストラの演奏会でもなかなか…。埋もれがちな名曲にしっかり光を当てるのも下野流だ。

 ワーグナーの影響が濃厚なホルン四重奏で始まる「前奏曲」が、音楽の深い森へと導くプログラム。噛みしめるほどに味わい深い。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2021年11月号より)

すみだクラシックへの扉 #03
2021.11/19(金)、11/20(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp