ブラジルのジョゼ・ソアーレスが優勝
第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉の本選が10月3日に東京オペラシティ コンサートホールにて行われ、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」(1947年版/抜粋)を振ったジョゼ・ソアーレス(ブラジル)が優勝。併せて聴衆賞も受賞した。
ソアーレスは、1998年、ブラジル生まれ。合唱指揮者を母に持ち、音楽と芸術が暮らしのなかにある家庭で育つ。2017年にはカンポス・ド・ジョルドン冬の音楽祭指揮賞を受賞した。現在は、サンパウロ大学で作曲も学んでいる。これまでに、マリン・オルソップ、アルヴォ・ヴォルマー、アレクサンダー・リープライヒ、クラウディオ・クルス等に指揮を師事。19年のパルヌ音楽祭では、パーヴォ・ヤルヴィにも学んだ。20年から、ブラジルのミナス・ジェライス・フィルハーモニー管弦楽団でアシスタント・コンダクターを務めている。ソアーレスには、表彰状・メダルのほか、200万円の賞金が贈られる。
第2位は、サン゠サーンスの交響曲第3番「オルガン付」(抜粋)を取り上げたフランスのサミー・ラシッド。カルテット・アロドのチェリストとしても活躍している。第3位には、R.シュトラウスの交響詩「死と変容」を振ったバーティー・ベイジェントが入賞し、特別賞・齋藤秀雄賞およびオーケストラ賞(オーケストラの団員の投票による)も受賞した。英国王立音楽院で学んだベイジェントは、20年に行なわれたグィド・カンテッリ指揮コンクールにて特別賞を受賞している。日本勢で唯一本選に進んでいた米田覚士は、奨励賞を受賞した。米田は、東京藝術大学指揮科卒業。高関健、鈴木織衛、小田野宏之に師事。2020年には渋谷区文化総合センター大和田開館10周年記念演奏会でタクトを執った。
第19回 東京国際音楽コンクール〈指揮〉
第1位 ジョゼ・ソアーレス José SOARES(ブラジル)
♪ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)より第1部・第2部・第4部
第2位 サミー・ラシッド Samy RACHID(フランス)
♪サン゠サーンス:交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付」op.78 第1部よりAdagio – Allegro moderato、第2部
第3位 バーティー・ベイジェント Bertie BAIGENT(イギリス)
♪R.シュトラウス:交響詩「死と変容」op.24 TrV158
入選・奨励賞 米田覚士 Satoshi YONEDA(日本)
♪チャイコフスキー:幻想的序曲「ロメオとジュリエット」
特別賞・齋藤秀雄賞・オーケストラ賞 バーティー・ベイジェント
聴衆賞 ジョゼ・ソアーレス
今回は、49の国・地域より過去最多となる331名の応募があり、8ヵ国の14名(そのうち2名が棄権)が書類・ビデオ選考による事前審査を通過し、9月27日と28日にわたっておこなわれた第一次予選に参加。翌日29日と30日の第二次予選を勝ち抜いた4名が、審査曲(課題曲)と自由曲を指揮する本選に臨んだ。管弦楽は新日本フィルハーモニー交響楽団。審査委員長の尾高のほか、シャーン・エドワーズ、広上淳一、オッコ・カム、ライナー・キュッヒル、準・メルクル、ユベール・スダーン、高関健、梅田俊明が審査に当たった。
今年から、1970年の同コンクール(第2回)で第2位となった尾高忠明が審査委員長を務め、コンクール出身者初の審査委員長の就任となった。審査終了後の表彰式で、尾高は「今年は応募者が少ないだろうという私たちの予想を反して多くの応募がありました。優れた出場者たちとオーケストラ、そして審査員の方々と、本当に素晴らしい方たちが集い、私はこの1週間とても幸せでした」とコメント。翌日4日にオンラインでおこなわれた入賞者発表記者会見には、1位〜3位の入賞者3名が審査委員等とともに出席。優勝したソアーレスは「大きな国際コンクールに出場するのは今回が初めて。このような場で認めていただいて光栄です。コロナの影響で自分の国ではオーケストラが苦しい状況にありますが、これから指揮者として、音楽から得られる幸せを皆さんとシェアしていきたいです」と喜びを語った。
本コンクールでの入賞を契機にスタートした尾高審査委員長の指揮者人生は、今年でちょうど50周年。「これから指揮者としての長い道のりを頑張って歩んでいってほしい」と、入賞者や若き指揮者たちにエールを送った。
来年4月には、ハンガリーのリスト音楽院ホール(最高位入賞者または実行委員会が指名した入選者1名が出演)、7月に東京オペラシティ コンサートホールで入賞デビューコンサートが予定されている。
第19回 東京国際音楽コンクール〈指揮〉
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