特別な編成で贈るピアソラの名ナンバー
南米ブエノスアイレスで、欧州からの移民たちにより19世紀末に確立した音楽、タンゴ。その演奏には欠かせないドイツ生まれの蛇腹楽器バンドネオンの奏者であり、20世紀音楽シーンでジャンルの枠組みを超えて孤高の道を歩んだ作曲家、アストル・ピアソラ(1921-92)の生誕100年である今年。記念プログラムも目白押しだが、やはりタンゴを“本職”とするバンドネオン弾き、小松亮太の公演に注目したい。
3月に著書『タンゴの真実』を上梓し、その知られざる歴史“ウソ&ホント”からリズムや楽器の分析、門外漢のアプローチに巨匠たちの裏話まで、時にユーモアを交えた歯に衣着せぬ語り口で徹底解剖し、各方面に衝撃を与えたのも記憶に新しい小松。11月、大田区民ホール・アプリコのステージには、ピアソラが60〜70年代に断続的に結成した前期・キンテート(クインテット=五重奏団)を彷彿とさせる編成に、パーカッション(普段打楽器を用いず打楽器的な演奏をするタンゴでは特別なケース)とゲストダンサーを加えたメンバーで登場。かつてクラシック界を席巻した名曲「リベルタンゴ」をピアソラオリジナルの1975年版で披露するほか、今回が日本初演となる「ウィスキー」「ルミエール」、楽譜通りの弾き方とその真逆、その中間が混在する演奏家泣かせの「ブエノスアイレスの冬」などをとりあげる。本来の“タンゴ”に立ち返ったピアソラを体験できる、絶好の機会をお聴き逃しなく!
文:東端哲也
(ぶらあぼ2021年10月号より)
2021.11/19(金)18:30 大田区民ホール・アプリコ
問:大田区文化振興協会03-3750-1611
https://www.ota-bunka.or.jp